抄録
本論文では, わが国の公共事業執行のプロセスである公共工事建設生産システムが, どのような形成過程を経てきたか,その背景にはなにがあるのかなどについて明らかにし, 歴史的な考察を加えた. 対外比較の視点を交えつつ近世, 近代から今日に至るまで、一般土木だけでなく工場施工をもつ橋梁分野も対象とした. わが国の公共工事建設生産システムは, 近代以前の執行システムをベースに, 明治以降開始した大量, かつ恒常的な鉄道建設を通じて基本が形成された. このシステムは, 発注者の圧倒的な指導力をもとに, わが国の商慣行の影響を強く受けながら発達を見たが, 基本的には今日に至るまで大きな変革を伴わず, これ故に欧米と比較すると強い特異性をもつ.