抄録
コミュニティ・ゾーン形成事業は1996年に創設されて以来全国各地で整備が進められ, 実践期に入った. 多くの調査・研究により様々な効果があったとの報告とともに, いくつかの課題も指摘されている. それらの中でも本研究では, コミュニティ・ゾーン形成事業の「社会的公平性」の課題に着目し, 全市民が受益可能なコミュニティ・ゾーンの環境質としての価値を評価することを試みた. 今後展開されるコミュニティ・ゾーン形成事業に対する全市民的立場に立った経済評価をCVMを用いて行い, 更に居住地の整備状況によって異なるであろう市民の本事業に対する賛否態度を意識構造分析を通じて明らかにした. 以上の分析より, 市民は市域全体の地区交通環境向上を目的とするコミュニティ・ゾーン形成事業に対して程度の差異はあるものの全体として賛成の意向を示していることが分かった.