抄録
長さに比べ径が大きいケーブルの張力計測を振動法により行う場合, ケーブル曲げ剛性のわずかな見積もり誤差が張力計測に大きな精度低下をもたらす. そのような場合の張力と曲げ剛性の同定に, 拡張カルマンフィルターによる張力同定法を応用した. 現場で容易に加振できる方法として打撃加振と取り付け型加振装置の2種を用いた. 取り付け型の加振装置では, ケーブルの質量に比べ加振装置の質量を無視しえない場合もあることから, 新たに任意位置に付加質量を有するケーブルの固有振動数を求める振動数方程式を導き, 拡張カルマンフィルターに組み込んだ. 径0.0287m, 長さ1.990mのより線ケーブルに対し打撃加振と取り付け型の加振装置の2種の加振方法を用いて加振実験を行い, 低張力領域でも曲げ剛性と張力を精度よく同定できることを示した.