2003 年 2003 巻 741 号 p. 69-87
1960年1970年代の日本の急激な経済成長にともなって, 水環境問題は全国的規模で深刻な状況に陥った. これに対して陸域から流入する有機汚濁量を制限する総量規制施策が実施された. COD (化学的酸素要求量) が指標として採用され, 削減対象になっている. 本研究では低次生態系水質予測モデルを適用し, 大阪湾における削減・規制施策が水質保全に及ぼす影響を1950年から2020年に亘って予測した. 結論から言えば, 総量規制の対象項目にCODのみならず, 窒素もリンも付け加えるべきである. その理由は, 窒素やリンはCODの内部生産に直接的に係わるからである. この種の排水規制施策と富栄養化対策, ならびに環境を再生する施策をあわせながら, 政策を展開することが好ましい.