抄録
マングローブ氾濫原における水理環境の平面構造を明らかにするために, 沖縄県石垣島吹通川マングローブ水域を対象として, 二つの河道部 (creek) に挟まれている氾濫原 (swamp) 上の水位や流速変動に関する長期連続観測と多点平面観測を実施した. その結果, 従来の知見と異なって, 氾濫原上では, creek に直交方向のみならず, 平行方向の流速成分が有意な大きさで生じていること, また, 上げ潮時と下げ潮時の流向や流速レベルが異なる, という潮汐流の非対称性が顕著であることが明らかとなった. このような流動構造に対しては swamp 内の水位勾配が駆動力となっており, さらに, creek 内における水位分布がこの swamp 内における水位勾配の形成過程に大きく関与していることが示された.