抄録
本研究では, 往路トリップと復路トリップにおいて, 一方のトリップにおける交通手段選択の結果が互いにいま一方のトリップの手段選択に制約条件として機能するメカニズムを手段補完性と定義する. 家計のバス選択行動に手段補完性が存在する場合, バス市場に規模の経済性が原因となってバスの運行本数とバス需要の間にポジティブフィードバックのメカニズムが働く. 本研究では, 手段補完性を明示的に考慮したバス市場均衡モデルを定式化し, バス市場に複数均衡解が存在することを理論的に示す. さらに, カーシェアリング, レンタサイクル等の交通政策が手段補完性を補正する機能に着目し, この種の交通手段の代替化施策の導入が市場均衡や社会的厚生に及ぼす影響を分析する.