抄録
本研究では, 植物の成長が蒸発散に及ぼす影響を明らかにするため, ウェイングライシメータによる水収支観測および stem heat balance method による茎内流量計測を行った. その結果, トウモロコシを植栽したライシメータの蒸発散量は裸地の場合の2.1~2.2倍, トウモロコシの生育には植物体乾燥重量の192~295倍の水が必要であることが分かった. さらに, 茎内流量を用いてライシメータの蒸発散量を蒸散量と地表面からの蒸発量に分離し, 植物の乾燥重量, 丈, 葉面積と蒸散・蒸発量の関係を明らかにした. 風速および土壌の乾燥が蒸発散量に及ぼす影響を吟味した後, 植物の成長, 土壌水分量, 気象条件によって変化する蒸発散量を推定する数理モデルを構築した. 本モデルをライシメータに適用したところ, 蒸発散量の計算値は観測値をうまく再現した.