土木学会論文集
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2004 巻, 768 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 下迫 健一郎
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 1-12
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    水理模型実験は, 自然現象の解明や構造物の設計・施工における問題解決のための, きわめて重要で有効な手段である. ただし, 小縮尺の模型実験では縮尺の影響により実際の現象を再現できない場合もあり, こうした問題を克服するには, 実規模に近い大型実験施設を用いることが, 最も有効な解決策である. 本報告は, 水理模型実験における縮尺の影響に関する既往の研究例および大型実験施設を用いた実験結果の例を紹介し, 大型水理模型実験の重要性と今後の展望について述べたものである.
  • 植物の成長と水文素過程に関する基礎研究
    東 博紀, 岡 太郎
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 13-22
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 植物の成長が蒸発散に及ぼす影響を明らかにするため, ウェイングライシメータによる水収支観測および stem heat balance method による茎内流量計測を行った. その結果, トウモロコシを植栽したライシメータの蒸発散量は裸地の場合の2.1~2.2倍, トウモロコシの生育には植物体乾燥重量の192~295倍の水が必要であることが分かった. さらに, 茎内流量を用いてライシメータの蒸発散量を蒸散量と地表面からの蒸発量に分離し, 植物の乾燥重量, 丈, 葉面積と蒸散・蒸発量の関係を明らかにした. 風速および土壌の乾燥が蒸発散量に及ぼす影響を吟味した後, 植物の成長, 土壌水分量, 気象条件によって変化する蒸発散量を推定する数理モデルを構築した. 本モデルをライシメータに適用したところ, 蒸発散量の計算値は観測値をうまく再現した.
  • 佐藤 光三
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 23-32
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    フラクチャーや流動バリアなどの不均質体が離散的に存在する媒体において, 分散を伴う流れの数値計算手法を開発する. 不均質体まわりの流れを表す特異解は, 重ね合わせの原理に基づいてCVBEMに解析的に組み込まれる. 一次元流れ問題に対して得られる分散流れの解析解を利用するため, 二次元流れを複数の流線に沿った一次元流れに分解する. 流線は流れ関数を用いてCVBEMにより追跡され, 流線に沿った一次元の解を足し合わせることにより二次元流れ問題に対する分散流れの解が得られる. 応用例として考えたトレーサー試験の再現を通じて, 当該計算手法の有用性が確認された. さらに, 媒体設定が簡便であることから多数のデータセットを用いる確率論的シミュレーションへの実際的な対応性が示された.
  • 平林 桂, 砂田 憲吾, 大石 哲, 宮沢 直季
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 33-43
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    片庭川流域において発生した2つの洪水に対し, 流量・粒径別浮遊土砂濃度の時間変化を計測した. その結果, ウォッシュロード濃度の時間変化と浮遊砂濃度の時間変化特性が異なる場合があることを見出した. また, 片庭川流域を対象に, 流域全体で降雨および表面流によりウォッシュロードが, 河道内で浮遊砂が生産され, 流水とともに河道に集められ輸送される過程を表現する数値モデルを構築した. このモデルにより, 1996年洪水, および1997年洪水を対象に, 観測点におけるウォッシュロード・浮遊砂濃度の時間変化の計算を行い, 観測値と比較してその再現性を確認した. ウォッシュロードについては, 表面流により生産されるものと雨滴により生産されるものの割合について数値実験的に考察した.
  • 内田 龍彦, 福岡 捷二, 渡邊 明英
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 45-54
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    床止め工などの河道横断構造物の直下流部に生じる河床洗掘は構造物の安定性を低下させるだけでなく, 付近の護岸工や堤防の破壊を引き起こす原因となり得る. このため, 床止め工下流には一般に護床工が設置される. しかし, 構造物の下流端となる護床工下流では, 床止め工下流と同様に河床洗掘が生じるため, 構造物下流の洗掘を防ぐ抜本的な解決法が求められている. 本研究では, 構造物の下流端で生じる河床低下, 洗掘を設計論的に許容することで, 下流河床に柔軟に対応しつつ, 洗掘孔内の流体混合により洗掘力を軽減させる工法に着目した. このために, 床止め工下流の流れや局所洗掘を見積もれる数値解析モデルを検討している. そして, 設計に洗掘孔を適切に活用することにより構造物下流の流況が改善されることを示し, 床止め工下流の河床洗掘の防護方法を提案している.
  • 二瓶 泰雄, 福永 健一, 小澤 喜治
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 55-66
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    実際の魚体運動データを反映しつつ, 複数尾の魚周辺の流動計算に適用可能な数値モデルを開発することを試みた. まず, 室内実験により静水中を遊泳する魚体運動をビデオ撮影し, その画像データを用いて魚体運動抽出のための画像解析手法を構築した. 次に, 得られた魚体運動データを用いて, 矩形座標系に基づく1尾及び2尾の魚周りの流動計算を実施した. この結果, 尾鰭の波状運動や魚体全体の大変形, 魚の遊泳方向変化に伴い, 魚周辺から渦層が剥離して魚後方にカルマン渦と逆の配置をしている渦列が形成された. それらと連動して, 魚体周囲の圧力分布が大きく変化して前方推進力や抵抗力が生じていることが示された. また, これらの流動計算結果を用いて, 魚個体間における流体力学的な相互作用特性について検討した.
  • 禰津 家久, 矢野 勝士
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 67-77
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    流下方向にワンド模型を2つ配置した開水路流れにおいて, 上流ワンドのアスペクト比および上流ワンドと下流ワンドとの設置間隔を系統的に変化させた12ケースと単体ワンドの全13ケースを対象に実験を行った. 計測機器はPIVを使用し, 計測対象は下流ワンドとした. その結果, 上流ワンドのアスペクト比が大きくワンド設置間隔が小さいほど主流部での時間平均流速分布は主流側へ流向が変化し, 境界部付近で発生する内部せん断層の位置が変化することが明らかとなった. また, 乱れ特性量の絶対値は増加し, 乱流混合が活発に行われていることもわかった. さらに, ワンド周辺での組織構造についてウェーブレット変換を用いて, 流れ構造を3つの周波数帯に分割解析した. これより上流ワンドのアスペクト比と設置間隔を変化させると, 組織渦の軌跡はかなり変化することが明らかとなった.
  • 新谷 哲也, 梅山 元彦
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 79-88
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    斜面を遡上する内部波の変形・混合過程を把握するために, 数値実験及び水理実験を行った. 数値計算では, 内部波挙動を精度良く再現するためにCIP法を用い, 乱流モデルとしてκ-εモデルを採用した. 実験は, フラップ式内部波造波装置を設置した長さ6mの2次元水槽を用いて行った. 実験では, 塩水と淡水を使って成層化した斜面地形を有する海域をモデル化した. 内部波の計測には, 内部波波高計と可視化解析法を用いた. 可視化解析では, 撮影した画像を画像処理して輝度分布図に変換することで, 内部波の変形と密度境界面付近で生じる混合を予測した. 実験結果と数値計算結果を比較した結果, 斜面を遡上する内部波の変形及び混合状況は数値計算によって適切に再現され, 本数値計算手法の実験室レベルでの内部波問題に対する適用性が確認できた.
  • 渡部 靖憲, 森 信人
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 89-100
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    この論文は, 赤外線放射線計測により砕波後の大規模渦構造を可視化する手法を提案すると共に, 水表面下の渦による流体混合及び乱れの発達に起因する水表面温度変化の時間, 長さスケール遷移について議論するものである. 砕波ジェットの着水直後に発生する counter-rotating 縦渦中の回転流体運動により水面の表層を覆う skin layer が破壊されその下の bulk 水隗が水面に現れるため, 水表面上の水温は水面下の渦構造を反映する. この波向き方向に軸を持つ縦渦はスパン方向に配列する構造を維持したまま沖向きに徐々に伸張され, 連続して到来する新たな砕波が skin layer を砕波点近傍まで輸送しこれを回復するまでの間に水面下の流体を混合する.
  • 森 信人, 渡部 靖憲
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 101-111
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    水表面で反射する太陽光による赤外線反射エネルギーの顕著な増加と砕波時の水表面の乱れより, 砕波帯では赤外線放射量が大きく変化する. 本論文では, 赤外線カメラを用いた砕波帯の現地観測を行い, 砕波帯表層における赤外線放射量の変化とその特徴について議論を行っている. 波の遷移と赤外線画像の変化の関係について調べ, 通過する波の位相と赤外線放射変化の特徴的なパターンや水表面の乱れと表面流速の時空間変化についての観測方法を提案している. 上記の検討により, 砕波帯において砕波により取り込まれた気泡が, 砕波後に水表面上に再浮上することにより生成される水表面の乱れの時空間変化を赤外線カメラにより可視化し, これらの変化を定量的に観測できることを明らかにしている.
  • 捨石構造物を対象とした信頼性設計の試み
    伊藤 一教, 安田 孝志
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 113-130
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    性能設計の照査手法の一つに信頼性設計法があり, このうちレベル3の設計法は破壊確率によって性能照査を行う. 捨石構造物の破壊確率を算出する場合, 実験式や個別要素法を用いたモンテカルロ法は有効な手法であるが, 実験式の適用性や解析に要する膨大な計算時間など課題が多い. そこで, 本論では捨石構造物のうち被覆石の安定性問題を例にとり, 短時間に破壊確率を算定できる確率個別要素法を開発した. 確率個別要素法は確率理論における一次近似法を個別要素法に適用したものである. 本手法の考え方, 定式化および特徴を整理した上で, 実験結果と比較することで妥当性を検証した. その結果, 被覆石の被災率を再現できることが確認でき, 本手法が性能照査手法となりうることが示された.
  • 北村 康司, 仲座 栄三, 津嘉山 正光, 玉城 幸治, Shak RAHAMAN
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 131-146
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    複雑な沿岸地形を有すると共に, 急勾配の陸棚斜面を有する沖縄本島残波海域における潮流および内部波の特性が現地観測により明らかにされている. 順圧的な潮流成分は水表面潮汐波とほぼ同位相をとり, 沿岸方向の往復流となっている. これに対し, 岸沖流速成分は主として傾圧モードとなっていることなどが示されている. また, 水温および塩分の観測データや特性曲線を用いた理論解析により, 残波海域の流れが陸棚斜面で作りだされる内部波の影響を大きく受けた流れであることなどが明らかにされている.
  • 田村 仁, 灘岡 和夫, Enrico C. PARINGIT
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 147-166
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    典型的な裾礁域である石垣島東岸を対象として, 複雑な地形がリーフ内流動特性に及ぼす影響を把握するため, まず, 対象海域で現地観測を行い, リーフ内やチャネル周辺における基本的な流動パターンの把握を試みた. また, このような複雑な地形的特徴をできるだけ正確に反映した数値流動解析を行うべく, 衛星リモートセンシング画像からの逆推定アルゴリズムによって対象海域リーフ内の高精度水深マップを作成し, 新たに改良を加えた浅水乱流モデル (SDS-Q3Dモデル) により対象海域の海水流動シミュレーションを行った. その結果, 数値流動シミュレーションは現地観測結果を精度良く再現できており, リーフ及びチャネル地形効果が対象海域内流動特性に大きな影響を及ぼしていることが示された.
  • 森 信人, 平口 博丸
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 167-177
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    気象庁の週間アンサンブル予報資料を用いて実施したアンサンブル波浪予測シミュレーション結果について解析を行い, 予測の精度検証および予測価値について検討を行った. アンサンブル波浪予測の結果を様々な設定波高Hsを越える波高の出現について幾つかの評価指標を用いて評価し, 決定論的波浪予測と比較して1日予測で20~25%, 4日予測で30~35%予測精度が改善されることを示した. さらに, コスト・ロスモデルを用いて, アンサンブル波浪予測を利用する際の経済的メリットについて検討を行った. 決定論的波浪予測と比較して, アンサンブル波浪予測は波高1mを越えるか否かという常時波浪の出現について有効な予測を与え, その効果は対策コスト/損害比が0.5から外れるほど, 予測時間が長くなるほと顕著であることを明らかにした.
  • 赤松 良久, 池田 駿介, 中嶋 洋平, 戸田 祐嗣
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 179-191
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    急勾配な河川と河口のマングローブ樹林が特色である沖縄地方のマングローブ水域では出水による粒子態の物質の輸送がマングローブ生態系に大きな影響を与えていると考えられる. そこで, 本研究では現地観測および数値計算により出水時のマングローブ水域における粒子態物質の輸送と出水がマングローブ生態系に及ぼす影響について検討した. その結果, 出水の規模だけでなく, 出水と潮汐とのタイミングが河口域に位置するマングローブ水域での粒子態物質の挙動を支配していることが明らかになった. また, 出水時のマングローブ水域ヘリンが供給されることがわかった.
  • 赤松 良久, 池田 駿介
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 193-208
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    マングローブ水域における物質循環機構を理解するために, 物質循環シミュレーションモデルを構築した. 本モデルでは底質中の地下浸透流場の解析もモデル内に取り込み, 底質と表層水の間での溶存態物質のやり取りも考慮した. 本モデルによって現地河川における潮汐による溶存態の有機物・栄養塩の挙動をおおむね再現可能であり, 本モデルを用いた数値解析の結果, 大潮期のマングローブ水域から沿岸域への溶存態の有機物・栄養塩の供給量は小潮期に較べて2~5倍程度であることが明らかになった.
  • 安田 浩保, 渡邊 康玄, 藤間 功司
    2004 年 2004 巻 768 号 p. 209-218
    発行日: 2004/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    十勝沖を震源とする地震が2003年9月26日の早朝に2度にわたり発生し, 北海道の太平洋沿岸を中心とした広い範囲に大きな被害を及ぼした. この地震を原因とする津波が北海道の太平洋沿岸全域から本州北部の太平洋沿岸の広い範囲で観測された. 今回の津波は沿岸部などに甚大な被害をもたらすことはなかったものの, 例外的な長時間にわたる水面変動が継続したこと, 複数の河川で河口から浸入した津波が河口から10km程度も上流までを溯ったことがその特徴として挙げられよう. 本文では, この津波の河道への浸入が認められた, 十勝川, 釧路川, 沙流川, 鵡川に関する水位記録, 現地調査結果をとりまとめるとともにこれらに対して考察を加え, 河川を溯上する津波の危険性を指摘した.
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