抄録
やや長周期の地震により石油タンク貯蔵液のスロッシングが発生し,浮屋根の沈没,破壊,そして最悪の場合,火災発生といった問題が生じている.2003年9月に発生した北海道十勝沖地震で貯槽屋外タンクの浮屋根がスロッシングで沈没した.現地調査の結果,この原因は浮屋根デッキ部が破損して浮力が大きく失われたためと考えられている.本論文ではこの沈没した貯槽の1/10モデルを用いて振動実験を行い,浮屋根の挙動の把握を行った.その結果,浮屋根が1次のスロッシング振動から減衰状態に移行した時,浮屋根デッキ部の中央部分を上下に凹凸させる1次固有周波数の2倍の値を有する高調波成分の現象が確認された.これが浮屋根デッキ部破損の一つの要因となったことが考えられるので,この現象に関して報告する.