抄録
橋梁用亜鉛めっき鋼線の拡散性水素濃度に及ぼす,腐食レベルおよび導入応力の影響について研究した.鋼中の拡散性水素は,水素脆性と密接な関わりがあり,1570 MPa 級の亜鉛めっき鋼線の場合,拡散性水素が 0.6 ppm から水素脆化の兆候を示すことが報告されている.本試験では,実際のケーブルの腐食環境を再現した,湿ったガーゼを巻きつける方法で亜鉛めっき鋼線を腐食促進させて,腐食後のワイヤに吸蔵された拡散性水素をガスクロマトグラフィーで測定した.その結果,亜鉛めっき鋼線は,腐食の進行度に関係なく,また導入応力(500 MPa)を加えた状態で腐食させても,ワイヤの拡散性水素濃度は 0.2 ppm 以下であった.この結果から,亜鉛めっき鋼線は水素脆化の懸念が小さいと考えられた.