2010 年 66 巻 4 号 p. 836-849
鋼橋に生じた疲労き裂に対して溶接により補修を行うことは,当て板等の補強部材を必要としないため工期や費用を抑えることができ,またボルト添接が不可能な狭隘部に対して有効である.しかしその一方で,溶接補修部においては溶接欠陥や残留変形が生じてしまい疲労強度が低下する恐れがある.さらに,き裂が生じた継手部には疲労強度の低い継手ディテールが採用されていることが多く,たとえ健全な補修溶接により元の状態に回復できたとしても,補修後の疲労強度を補修前より向上させなければき裂が再発する可能性がある.そこで本研究では,溶接後の冷却過程にて圧縮残留応力を導入でき,かつ溶接変形を抑制できる低変態温度溶接材料に着目し,それを用いた溶接補修の有効性について検討した.