2018 年 74 巻 1 号 p. 51-62
本研究は伝統工芸の重要文化的景観地である小鹿田皿山を対象とし,窯元/家族の実存的景観の表象と評価を調べ,この地と関連が深い小石原皿山と比較して,窯業/伝統工芸の里の文化的景観の保全・活用に寄与すべき知見を得ることを目的とした.写真投影法による調査の結果,小鹿田焼の窯元と家族にとっての実存的な景観は,作業様相,人間,道具類,活動場,屋内外の作業をつなぐ中間領域等によって特徴づけられることがわかった.また小鹿田では生業者/生活者自身の内なるまなざしが,小石原では窯元/家族が想定する来訪者の外からのまなざしが,景観表象に投影されやすいと推察された.以上より内なるまなざしが地元に明瞭に確認される場合,景観の観光利用の視線に相反することについて,地域計画/管理の上で,留意が必要であることが指摘された.