抄録
本論文は,大規模な有限要素法解析のために,前川らによって提案されたコンクリートの非線形構成則を再定式化する.CG法に基づく高速ソルバが利用できるよう,全体剛性マトリクスの正定値性を保障することが主眼である.従来見逃されていた関係式を使うことで,非対称・非正定値の弾塑性テンソルの代わりに,対称・正定値の弾性テンソルと補正項を使う形式に構成則が再定式化された.また,計算負荷の高い4階のテンソルの逆テンソルの計算も不要とした.最も基本的な一軸圧縮に対し,再定式化された非線形構成則の収束性と,従来の構成則との等価性を数値計算によって検証した.再定式化された構成則に使われる対称テンソルの正定値性を実証し,剛性マトリクスの対称性と正定値性が保証されることを示した.