抄録
本研究では,波動伝播を利用した平板構造物の損傷検出手法を提案する.平板状の構造物を伝わる波はLamb波と呼ばれ,減衰が小さく長距離伝播し易いため一度に広いエリアの点検が期待できる.しかし,Lamb波は多くのモードを有し,かつ各モードそれぞれに分散性があることから,計測波形の解釈が困難である.本研究では,1次モードだけが発生する周波数帯を利用することにして多モードの発生を抑制するが,このような周波数帯では損傷の大きさに比べて波長が十分に短くないため,加振点から直接伝わる直達波と損傷部で反射して伝わる反射波とが混在してしまう.さらに,反射波は直達波に比べて振幅が小さいため,反射波を判別するのが困難である.この問題を解決するため,格子状に配置した複数の計測点で応答を計測し,空間領域における情報のみならず,波数領域における情報も利用することによって,直達波と反射を分離し,反射波の到来方向および到来時間を推定し,損傷を検出する手法を提案する.