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新城 竜一
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_3-I_11
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
琉球列島の地質学的特徴について概観し,特に中琉球に位置する沖縄島をとりあげ,その地質と成り立ちについて解説した.琉球弧はプレートの沈み込み帯に位置し,その西側には若い背弧海盆(沖縄トラフ)が発達している.そこではマグマ活動と海底熱水活動が活発である.島弧は2つの構造線で分断され,北・中・南琉球の3つのセグメントに分けられる.沖縄島北部の地質は,ペルム紀から始新世にかけての古い地層群からなり,主に付加体堆積物で構成されている.これらは西から東へ帯状に配列しており,最も東側の名護帯と嘉陽帯は西南日本の四万十帯に対比される.沖縄島の南部には後期中新世から第四紀の若い地層(島尻層群と琉球石灰岩)が分布している.島尻層群を構成する泥が堆積した海から,琉球石灰岩のもととなったサンゴ礁の海へ,海洋環境が大きく変化したことが推定され,沖縄トラフの形成と密接に関連した海域と島弧の地殻変動(島尻変動)が生じたらしい.その後,琉球石灰岩を切るブロック状の断層運動(うるま変動)によって島嶼化がすすんだ.
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名木野 晴暢, 志賀 有人, 足立 忠晴, 水澤 富作, 三上 隆
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_13-I_24
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本論文では,弾性基礎上にある矩形板の曲げ問題における古典理論と変位型の一次せん断変形理論であるMindlin理論の適用範囲を明らかにすることを目的とし,三次元弾性論に基づく解を正解とした理論比較を行った.古典理論とMindlin理論の適用範囲に影響を与えるパラメータは複数あるため,本論文では表面力として全面等分布荷重を受ける板周面が単純支持された正方形板を対象とし,板厚と地盤反力係数に着目して検討を行った.また,通常の理論比較では板部材の変位や応力の面内方向または板厚方向分布を指標とする評価が一般的であるが,本論文ではこの局所的な評価に加えて,矩形板に蓄積されるひずみエネルギーと弾性基礎に蓄えられる弾性エネルギーを指標とした全体的・平均的な評価も行い,多角的な視点から両理論の適用範囲を明らかにした.
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小池 育代, 草野 彩子, 佐藤 太裕, 梅野 宜崇, 島 弘幸
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_25-I_32
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本研究では,円筒状のナノ炭素物質であるカーボンナノチューブについて,一定圧力作用時に発生が予想された特異な座屈変形モードを分子動力学法で再現することを目的とする.特に径が小さく原子数が少ない場合の解析を実施し,薄肉円筒シェル理論により得られた臨界座屈荷重との比較を行うことにより,円筒シェル理論の適用性についても言及する.さらに,一定圧力下での単層および多層カーボンナノチューブの座屈挙動を原子レベルで検証し,円筒シェル理論では解析できない座屈後の大変形挙動を追跡する.
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吉田 郁政, 蔵谷 湧介, 大竹 雄, 本城 勇介
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_33-I_42
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
構造物の劣化や環境の特性はそれぞれ異なるため,劣化進行には大きなばらつきが生じる.劣化状態を健全度と特性指標の2つのパラメタによって表し,グルーピングと経過年数に対する回帰曲線群の推定を統計的に同時に行う方法の提案を行った.提案方法はEM (Expectation Maximization)アルゴリズムやPSO (Particle Swarm Optimization)法を組み合わせた多目的曲線群算定法と解釈することができる.劣化が進行した構造物ではそのばらつきも大きくなる傾向があるため,劣化進行に応じてばらつきの大きさが変化する定式化の提案も行った.提案手法を岐阜県橋梁点検データに適用したところ,特性の異なる3本の劣化曲線群を推定することができ,別途実施した詳細な情報に基づくグルーピングとその回帰とある程度一致した結果が得られた.
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島本 由麻, 鈴木 哲也
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_43-I_50
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
近年,構造材料において原料の調達から廃棄までのライフサイクルコストの最小化に基づく環境調和性の付加が求められている.本研究は,もみ殻灰および稲わら繊維を混和した酸化マグネシウム改良土の力学特性を,割裂破壊挙動の際に発生する弾性波の観点から評価した結果を報告する.実験的検討では,混和物を変化させた3つのシリーズにおいて割裂試験を行い,破壊過程をAE法および画像解析により評価した.検討の結果,もみ殻灰および稲わら繊維を混和することで,力学特性およびAE発生挙動に差異が確認された.AE法によるSiGMA解析および画像解析結果より,ひずみの局所化と,内部からの破壊の進行が示唆された.
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井上 一哉, 松山 紗希, 田中 勉
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_51-I_62
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本研究では,地下水揚水に伴う揚水井の集水域を後方粒子追跡法により効率的に推定する方法を提案した.また,面積と周長の推定に加えて,移流時間の等しい集水域同士をアンサンブル推定する方法を考案した.不均質透水場を対象に,サイトデータを基に不均質度の等しい100通りの透水係数分布を地球統計学的に発生させ,集水域を推定した.その結果,透水係数の不均質度と揚水量の増加は集水域分布の推定確率を低下させる方向に作用する結果を得た.また,ランダムウォーク粒子追跡法を用いて,移流時間の異なる集水域ごとに,集水域から揚水井に至る汚染物質の流入確率をアンサンブル推定した.その結果,低い揚水量ほど揚水井への物質流入確率は低下し,遅延係数の空間分布を化学的不均質性として考慮すると,流入確率はさらに低下する結果を得た.
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金 哲佑, 張 凱淳, 北内 壮太郎
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_63-I_72
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本研究では,鋼トラス橋の振動ヘルスモニタリングの可能性について単径間鋼トラス橋に人工損傷を与えた車両走行実験を行い,損傷前後のトラス橋の振動特性の変化に着目する異常検知について考察する.振動特性の同定手法として多次元ARモデルおよびStabilization Diagramを用いる.異常検知においては,振動特性の統計的距離であるMahalanobis Distance (MD)を損傷指標とし,統計的パターン分析手法であるMahalanobis -Taguchi System (MTS)を適用する.検討結果,減衰定数よりばらつきの少ない振動数のほうが損傷による統計的パターン変化に敏感であった.また,複数の振動モードを同時に考慮することで統計的パターン分析による異常検知精度の向上につながった.
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金 哲佑, 森田 知明, 杉浦 邦征
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_73-I_80
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本研究は,ベイズ的アプローチを実橋長期モニタリングデータおよび仮想損傷データに適用することで,温度および通行車両の影響を考慮した長期橋梁振動ヘルスモニタリングを検討した.線形システムモデルの係数で定義した損傷指標を用い,ベイズ回帰により残差を求め,閾値内に収まる割合およびベイズ仮説検定を用いて意思決定を行った.実橋長期モニタリングデータへ適用の結果,対象橋梁では時間帯を限定したモニタリングデータを用いることにより,通行車両の影響を低減できる可能性があると考えられ,健全時のデータを用いたベイズ仮説検定では,橋梁の損傷可能性はかなり低いと判定されることがわかった.仮想損傷データへ適用の結果,平均が一定でも,扱うデータ数が大きくなれば,損傷可能性が高くなることがわかった.
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鈴木 哲也
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_81-I_89
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
近年,鋼矢板を用いた農業用開水路の早期腐食に伴う耐久性低下が技術的問題となっている.本報では,既設鋼矢板にコンクリート被覆を施した複合材の曲げ載荷時の力学特性評価を試みた結果を報告する.検討にはAE法とデジタル画像相関法(DICM)を用いた.試験体は,既設鋼矢板,コンクリートおよびプレキャストパネルの三層で構成されている.検討の結果,試験体の変形挙動は,AEやDICMの試験パラメータを用いることにより評価可能であることが明らかになった.鋼矢板‐コンクリート複合材の変形挙動は,鋼矢板の凸凹形状に起因すると考えられるねじれ現象と密接に関連していることが示唆された.
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山岸 俊太朗, 鈴木 哲也
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_91-I_98
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
近年,コンクリート構造物の維持管理の重要性が高まりつつある中,材料損傷の定量的評価が不可欠となっている.本論では,コンクリートの損傷度を力学的特性と弾性波の観点から考察する.実験では,弾性波速度の測定と破壊試験を実施し,得られた物性値から損傷度の分布特性を評価した.解析的検討では,物性データの相関構造を空間統計モデルのセミバリオグラムより定量的に評価し,クリギング処理を施すことにより点的データから面的データへの拡張を試みた.検討の結果,コンクリートの弾性波速度と力学的特性の関係をクリギング処理により3次元分布として評価することが可能となり,損傷度の分布特性が弾性波速度と密接に関係していることが確認された.
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大野 又稔, 渡辺 健, 沼尾 達弥, 舟川 勲
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_99-I_106
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
球面レンズのカメラを使用した中性子ラジオグラフィの取得画像には,レンズの収差による歪曲が含まれる.また,被写体を透過する際に発生した散乱中性子線は,被写体外の透過中性子強度が高くなるにじみ効果や,被写体端の透過中性子強度が低くなるエッジ効果として,透過中性子強度の精度に影響を与える.本研究では,パラフィンとアルミニウムを等間隔で配置したスリット試験体の取得画像から,歪曲収差による誤差を補正し,中央に凝灰岩を設置したモルタル板試験体の取得画像から,畳み込み計算を用いて散乱中性子線による誤差を補正する方法を提案した.提案した補正方法で算出したモルタル板試験体の水分強度により,試験体内部の水分分布を把握することができ,また水分強度の変化より,凝灰岩からモルタルへ水分が移動した可能性が推察された.
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小林 秀一, 鈴木 哲也
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_107-I_114
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
近年,鋼矢板を用いた農業水利施設の早期腐食が技術的課題となっている.これら施設の再建設や改良の前提として更新工法の開発が喫緊の課題となっている.本研究では,非破壊検査法により,鋼矢板-コンクリート複合材を適用した農業水利施設における補修コンクリート部材のひび割れの定量評価を試みた.損傷度の定量評価には,非破壊検査法の一つである赤外線サーモグラフィー法と空間統計学のセミバリオグラム解析を適用した.セミバリオグラム解析は,物性値の空間分布特性を定量評価する手法である.実証的検討は,ひび割れ損傷が発生した水路施設で行った.検討の結果,セミバリオグラムは損傷度の影響を受けたと考えられる異なるセミバリアンスが確認された.このことから,赤外線画像を用いたセミバリオグラム解析により,コンクリート表層の定量的損傷度評価が可能になるものと考えられる.
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岩崎 佳介, 木本 和志, 市川 康明
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_115-I_124
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
土壌は熱伝導率の大きく異なる三相から成るがそれらの構成比だけでなく形状によっても熱伝導率は変化する.本研究では砂質土の微視的な構造を三次元多孔質体モデルとして提案・作成し,熱伝導解析により熱伝導率の推定を行うとともに,豊浦砂を試料としてカラム供試体を作成し,室内実験と逆解析により試料の熱伝導率を推定することで,得られた熱伝導率と飽和度の関係から三次元モデルの妥当性を検討した.
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古川 愛子, 児島 啓太, 清野 純史
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_125-I_133
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本研究では,波動伝播を利用した平板構造物の損傷検出手法を提案する.平板状の構造物を伝わる波はLamb波と呼ばれ,減衰が小さく長距離伝播し易いため一度に広いエリアの点検が期待できる.しかし,Lamb波は多くのモードを有し,かつ各モードそれぞれに分散性があることから,計測波形の解釈が困難である.本研究では,1次モードだけが発生する周波数帯を利用することにして多モードの発生を抑制するが,このような周波数帯では損傷の大きさに比べて波長が十分に短くないため,加振点から直接伝わる直達波と損傷部で反射して伝わる反射波とが混在してしまう.さらに,反射波は直達波に比べて振幅が小さいため,反射波を判別するのが困難である.この問題を解決するため,格子状に配置した複数の計測点で応答を計測し,空間領域における情報のみならず,波数領域における情報も利用することによって,直達波と反射を分離し,反射波の到来方向および到来時間を推定し,損傷を検出する手法を提案する.
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車谷 麻緒, 松浦 遵, 根本 忍, 呉 智深
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_135-I_144
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本論文では,画像相関法における誤差を低減させ,かつ高解像度のグリッドでひずみ分布を計測するための画像解析手法を構築し,コンクリートのひび割れ進展挙動の計測・可視化について検討する.コンクリートの微細なひび割れを計測するには,変位やひずみを測定するグリッドを高解像度にするとともに,ひび割れ形成に伴う画像の乱れや複雑変位に起因する測定精度の低下を防ぐ必要がある.これらの問題に対して,本論文では,検査領域の重複や階層化,物質点の追跡と変位ベクトルの更新を実装した画像解析手法を構築した.本手法をモルタルおよびコンクリート供試体の圧縮試験に適用した結果,高精度にひずみを計測でき,目視で確認できない微小なひび割れや,粗骨材の影響による複雑なひび割れ進展挙動を計測可能であることを示した.
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杉山 友理, 河井 克之, 田中 博之, 飯塚 敦
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_145-I_153
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
三軸試験を行う場合に,供試体設置後に計測されるB値は,供試体の飽和化の度合いを知るために用いられる.しかしながら,このB値に及ぼす要因については,飽和度以外には詳細な力学的説明は加えられていない.本論文では,極めて飽和に近い不飽和状態でも,間隙空気の挙動を精緻に表現できるように,まず既存の不飽和土構成モデルの枠組みに,空気相の液相への溶解を規定するヘンリーの法則を適用し定式化した.次に,得られたモデルを用いて,供試体の飽和度や拘束圧,背圧がB値計測に及ぼす影響を数値シミュレーションによって検討した.その結果,同じ飽和状態であっても,応力条件によって計測されるB値が異なることが分かった.
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保科 隆, 大塚 悟, 磯部 公一
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_155-I_164
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
東日本大震災では津波により多くの防潮堤が崩壊した.防潮堤の崩壊の原因には波力の作用とともに浸透力の作用が指摘されている.同様の崩壊は河川における堰でも河川水位の差によって発生することが報告されている.しかし,津波などの波力に加えて浸透力が作用する土構造物の安定性は,極限平衡法や支持力公式等の既存の設計手法では評価することが難しい.本研究では,地盤材料に関する剛塑性構成式を用いた剛塑性有限要素法ならびに浸透流解析によるハイブリッド解析手法を開発し,浸透力が作用する地盤の極限支持力・破壊形態を合理的に評価できることを明らかにする.
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鳥生 大祐, 牛島 省, 青木 一真
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_165-I_172
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本研究では,圧縮性流体と固体の熱連成場における流体解析手法を新たに提案した.本手法では,圧縮性流体と固体から成る多相場の基礎方程式を用いて流動・熱移動計算を行う.基礎方程式は保存形で表され,有限体積法を用いて離散化することで,質量保存則が高精度に満足される.提案した手法を内部に熱伝導性を有する固体を含むキャビティ内の自然対流に適用した.その結果,流体領域での自然対流と固体領域での熱伝導が再現され,壁面での平均ヌセルト数は既往の計算結果と概ねよく一致した.また,容器からの圧縮性気体の漏えいに対する数値実験を行ったところ,漏えいに伴う温度,流速分布,圧縮性気体の密度,容器内の圧力変化が再現可能であること,計算領域内で質量保存則が高精度に満足されることを確認した.
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加藤 準治, 加茂 純宜, 高瀬 慎介, 森口 周二, 車谷 麻緒, 寺田 賢二郎, 京谷 孝史
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_173-I_183
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
構造および材料の力学的挙動は,材料の微視構造(ミクロ構造)における幾何学的特性,例えば材料配置や形状,寸法に強く依存することが知られている.そのため,ミクロ構造の幾何学的特性を最適化することでマクロ構造の力学的パフォーマンスを最大限に引き出す,あるいは制御するための研究が盛んに行われている.そこで,本研究では近年材料開発分野において注目されているフェーズフィールド法を導入し,ミクロ構造のトポロジーを最適化するための手法の開発を目指す.本論文では,まずその基礎的研究としてマクロ変形は考慮せずに,ミクロ構造に周期境界と一様変形を与えた条件下で,その剛性を最大にするためのミクロ構造トポロジー最適化を定式化し,さらに本手法がどの程度の初期値依存性を有するかについて幾つかの数値計算例を用いて検証した.
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丸山 紀尚, 青木 一真, 牛島 省
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_185-I_194
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本研究では,周囲流体との力学的連成を考慮した衝突を伴う多数の物体運動計算MICSに対して,分散メモリシステムにおける動的負荷分散手法を提案した.本手法では物体計算領域を流体計算領域とは独立に,3次元スライスグリッドを用いて動的領域分割する.このことにより,各計算プロセスが所有する物体数の偏りを解消し,物体運動計算時間を短縮することが可能である.提案した計算手法を,水柱崩壊を受ける1,000,000個の物体群の解析に適用し,その有効性を確認した.物体計算と連成計算の総和のスピードアップは,256並列では逐次実行と比べて129.90となり,既往の解法より良好な結果が得られた.
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谷川 将規, 江嶋 孝, 樫山 和男, 志村 正幸
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_195-I_202
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本研究では,VR技術を用いた道路交通騒音評価システムの構築を目的とする.本騒音評価システムの特徴は,VR空間の中に道路およびその周辺環境を再現し,走行自動車からの発生騒音の伝播をリアルタイムに数値シミュレーションし,その結果を音としてユーザーに提示することである.視覚情報と聴覚情報は同期しているため,VR空間内で直感的な現象の把握や評価が可能である.本システムを自動車が行き交う複雑な混合交通に適用するため,多数の移動音源に対応したAmbisonicsによる立体音響システムの構築,実測に基づく音源データの利用などシミュレーションの精緻化と現実感の向上を図った.本論文は,この道路交通騒音評価システムの構築について述べるともに,複雑な音場,特に混合交通への適用性を検討した結果を示す.
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中畑 和之, 矢野 智之, 川村 郡, 斎藤 隆泰, 廣瀬 壮一
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_203-I_211
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
コンクリート中を伝搬する超音波の特性を定量的に把握するために,動弾性有限積分法(EFIT)を用いた数値解析と計測実験を行った.本研究では,コンクリート中の縦波の音速,周波数,減衰の3つに着目し,骨材率が異なる場合の各量の変化について調べた.解析では骨材の大きさ・分布形態を考慮し,コンクリートを3次元非均質モデルとして要素分割した.骨材率の増加に伴う音速の上昇と波動の多重散乱による中心周波数の低下については,数値シミュレーション結果と計測実験は良好な一致を示した.減衰についても,骨材率が増加すると両者の減少傾向は概ね一致するが,骨材分布に大きく影響を受けることがわかった.EFITを用いれば,コンクリート中の超音波の音速,周波数,減衰の変化を定量的に模擬できることを示した.
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森本 敏弘, 浅井 光輝, 笠間 清伸, 藤澤 和謙, 井元 佑介
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_213-I_221
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
2011年東北地方太平洋沖地震では,津波により防波堤や防潮堤などの港湾施設が甚大な被害を受けた.防波堤や防潮堤の被災メカニズムに関するこれまでの研究・調査により,I. 防波堤前面と背面の水位差に起因して作用する水平力,II. 防波堤の越流水ならびに目地で発生する流水による捨石マウンドの洗掘,III. 浸透流による捨石マウンドの支持力低下に伴うパイピング破壊などが被災の主因として考えられている.本研究では,この中でもIII. の浸透流による防波堤の崩壊現象の解明に焦点をあて,まず基礎段階として,粒子法による地表流(津波)と浸透流の統一解析法を構築した.支配方程式には既往の研究よりナビエ・ストークス方程式と拡張されたダルシーの法則を統一的に記述したものを採用し,粒子法の一種である安定化ISPH法の概念に基づいて定式化している.最後に,簡単な例題を用いて本解析手法の検証を行った.
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J.A.S.C JAYASINGHE, Seizo TANAKA, Lalith WIJERATHNE, Muneo HORI, Tsuyo ...
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_223-I_233
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
Based on meta-modeling, which allocates structural mechanics as mathematical approximation of con-tinuum mechanics, this paper proposes a conversion method from a solid element solution to a beam element solution. A key issue is the rigorousness of the proposed conversion method, since meta-modeling ensures that the most suitable beam element solution is the one that is close to the solid element solution by defining a distance between these solutions in a function space of continuum mechanics. Examples of applying the conversion method are presented. It is shown that the conversion method produces a more accurate beam element solution from a solid element solution, compared to an ordinary method. It is also shown that the conversion method is applicable to a practical problem of an actual large-scale tunnel structure.
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丸山 泰蔵, 斎藤 隆泰, 廣瀬 壮一
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_235-I_246
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本研究では, 演算子積分時間領域境界要素法(CQ-BEM)を用いた非線形超音波法の3次元数値シミュレーション手法の開発, 及びその手法を用いた数値シミュレーションを行う. 非線形超音波法とは, 線形超音波法では特に検出が困難である閉口き裂に対して, 有効な検査手法となることが期待されている手法である. しかしながら, 高調波, 及び分調波からなる非線形超音波は, き裂面での繰り返し打撃やせん断応力の変化によって発生するといったいくつかの説が提唱されているものの, その発生メカニズムは明確には解明されていない. そこで, これまでに行われてきた手法と比較して, より現実に即した3次元問題に対する数値シミュレーション手法を開発し, 解析を実行する. また, 遠方散乱波のフーリエスペクトル解析によって非線形超音波発生の特性を調べる.
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Ireshika KARUNARATHNA, Lalith WIJERATHNE, Muneo HORI, Tsuyohi ICHIMURA ...
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_247-I_254
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
Inspired by work of Payen et al.
1),2), this paper seeks to make mechanical interpretation of nodal force, in order to more accurately evaluate stress field using linear element of finite element analysis. A new mechanical interpretation is presented for nodal forces, which is an abstract quantity with a rigorous mathematical definition. Use of Lagrangean and particle discretization scheme reveals that nodal force gives total force acting on middle plane of element. Based on the aforementioned interpretation, this paper proposes a method for more accurately evaluating stress field. Numerical experiments indicate that stress field of proposed method is smoother and accurate compared to ordinary element stress evaluation. Moreover, it is found that the error of J-integral, for a mode-I crack problem, is several times smaller when estimated with nodal force based stress evaluation.
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綿貫 達也, 山田 貴博, 松井 和己
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_255-I_264
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本研究では,筆者等が開発したNitscheの方法に基づく伝熱解析のための領域分割型重合メッシュ法を応力解析へ適用する.この方法は,従来の重合メッシュ法とは異なり,詳細メッシュと大域メッシュに対応する各領域において独立に求解を行い,領域間を接続するLagrange未定乗数に関しては共役勾配法に基づく反復法を適用するものである.特に本研究では,変位境界を持たない詳細メッシュにおいて発生する浮遊運動問題に対して独立節点と仮想バネを導入した安定化手法を示すとともに,提案する手法の妥当性を検証する.
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Hidekazu YOSHIOKA, Koichi UNAMI, Masayuki FUJIHARA
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_265-I_276
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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Theoretical stability and error analysis on a Conforming Petrov-Galerkin Finite Element (CPGFE) scheme with the fitting technique for solving the Advection-Dispersion-Decay Equations (ADDEs) on connected graphs is performed. This paper is the first research paper that applies the concept of the discrete Green's function (DGF) to error analysis on a numerical scheme for the ADDEs on connected graphs. Firstly, the stability analysis shows that the scheme is unconditionally stable in space for steady problems and is stable in both space and time for unsteady problems if the temporal term is appropriately discretized with a lumping technique. Secondly, basic properties of the DGF on connected graphs, which provide key mathematical tools in the error analysis, are presented. The error analysis with the DGF reveals a direct relationship between the regularity conditions on the known functions and accuracy of the scheme, explicitly indicating that the accuracy of the scheme is strongly influenced by the accuracy of the discretized known functions. The error analysis also shows that the scheme is uniformly-convergent in the
L∞-error norm with respect to the diffusivity, which cannot be achieved in the conventional numerical schemes. This unique and remarkable property is a significant advantage of the present CPGFE scheme over the conventional ones.
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北 真人, 河原 能久, 椿 涼太, 牛山 朋來
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_277-I_287
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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2013年8月の島根県西部豪雨を対象として,気象モデルWRF(Weather Research Forecasting)とデータ同化手法の一つであるLETKF(Local Ensemble Transform Kalman Filter)を組み合わせた数値解析を実施し,WRF-LETKFの有効性を検討した.また,数値解析結果を用いて豪雨の発生要因を考察した.その結果として,本数値解析が,降水量や豪雨の発生位置を正確に捉えることはできないが,降雨期間の後半における強雨域の移動をある程度再現することを示した.また,地点観測と比較した結果,降雨期間の後半において,アンサンブル平均雨量の方が決定論的計算雨量よりも観測結果に近い結果を算出することを確認した.今回の集中豪雨は,東シナ海から供給された水蒸気フラックスが前線付近で収束したことに起因するが,中国山地の地形の影響も受けたことが推測された.
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青木 一真, 牛島 省, 宮木 伸, 鳥生 大祐
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_289-I_296
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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本研究では,高低マッハ数の圧縮性流体を対象とした3次元数値解析手法を提案し,その適用性を検証した.本手法では,質量・運動量・内部エネルギーの保存則に加えて,理想気体の状態方程式を基礎式とする.3次元コロケート格子上で有限体積法により保存則を離散化し,C-ISMAC法と高次精度TVDスキームを利用して,それらを安定に計算するアルゴリズムを示す.さらに,at MPI,OpenMPによる並列化により計算時間の短縮を図った.提案された解法を用いて,高マッハ数の圧縮性流れである3次元爆風伝搬,また,低マッハ数のベナール対流の計算を行い,理論解および既往の計算結果との比較を行った.その結果,温度や圧力,流速分布などに関して妥当な計算結果が得られることが示された.
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Mahendra Kumar PAL, Lalith WIJERATHNE, Muneo HORI, Tsuyoshi ICHIMURA, ...
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_297-I_305
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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This paper studies the extension of particle discretization scheme (PDS) in order to improve finite element method implemented with this discretization scheme (PDS-FEM). Polynomials are included in the basis functions, while original PDS uses a characteristic function or zero-th order polynomial only. It is shown that including 1st order polynomials in PDS, the rate of the convergence reaches the value of 2 even for the derivative. 1st order polynomials are successfully included in PDS-FEM. A numerical experiment is carried out by applying 1st order PDS-FEM, and the improvement of the accuracy is discussed.
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高瀬 慎介, 加藤 準治, 森口 周二, 寺田 賢二郎, 京谷 孝史, 野島 和也, 桜庭 雅明, 樫山 和男
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_307-I_315
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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本論文では,震源域から発生した津波の沖合領域での伝播から都市域での遡上に至る一連の挙動を,精度良く且つ低い計算コストで予測可能な,2D-3Dハイブリッド安定化有限要素法を提案する.具体的には,沖合での波の伝播には2次元(2D)浅水長波方程式を,遡上領域では3次元(3D)Navier-Stokes方程式を支配方程式に採用し,それぞれの解析領域に対して個別の非構造メッシュを用いて安定化有限要素法により離散化する.そして,これらの空間次元だけでなく節点配置も異なるメッシュ間で流速と圧力の連続条件を多点拘束(MPC)法により満足させることで,完全な3D解析に比べて格段に低い計算コストで,沖合から都市域に至る一連の津波伝播・遡上現象を解析可能とした.
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干場 大也, 加藤 準治, 高瀬 慎介, 寺田 賢二郎, 京谷 孝史
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_317-I_328
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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本研究は,塑性変形を呈する複合材料のエネルギー吸収性能最大化を目的としたトポロジー最適化問題を設定し,それを解くために必要な感度導出法の精度について検証するものである.一般に弾塑性材料を対象にトポロジー最適化を適用するためには高精度な感度の導出が必要不可欠となる.しかし,応力-ひずみ関係に見られる降伏点ならびに荷重除荷点のいわゆる微分不可能な箇所近傍では感度を精度よく求めることが困難となる.そこで,著者らは既往の研究
1)で等方性弾塑性材料を対象として,力のつり合い式を満たす応力を忠実に微分する感度導出法を提案し,降伏点近傍においても高精度の感度が得られることを示した.本論文は,その発展として幾度も荷重載荷ー除荷状態を繰り返す塑性変形状態を想定し,そのような状況下において提案手法がどの程度の精度を保持できるかを検証するものである.
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田邊 将一, 浅井 光輝, 宮川 欣也, 一色 正晴
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_329-I_338
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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東日本大震災から数年が経過した今,今後危惧される巨大津波に備えて橋梁の津波対策が積極的に議論されている.実寸大での橋梁流失実験が現実的に困難であるため,数値シミュレーションによる橋梁の流失被害予測が期待されている.本研究では,流体解析分野だけでなく破壊を考慮した固体解析分野での利用も注目されている粒子法を解析手法として採用し,これまで粒子法の中で提案されてきた流体剛体連成解析の定式化を整理した後,主に用いられている2つの定式化(速度ベースと外力ベース)による差異を検証することにした.この際,外力ベースの定式化においては近年開発された高精度な境界処理法を採用した改良法を提案している.最後に,簡単な橋梁流失問題を通して両定式化による結果を比較検討した.
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田中 智, 樫山 和男, 今西 準紀, 車谷 麻緒
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_339-I_348
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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本論文は,三次元非構造メッシュをバーチャルリアリティ空間において立体可視化して,メッシュの品質の評価および修正を対話的に行うことが可能なシステムの構築を行うものである.メッシュの修正方法としては,節点移動法に加えて要素細分化法の実装を行うとともに,任意形状の表面メッシュに対して節点移動制御を行うことを可能とし,システムの適用性の向上を実現した.また,要素のオーバーラップを検出する手法の構築とそれらを修正するための機能の実装を行った,本システムの妥当性と有効性の検証行うために,固体解析の例題に適用を行った.
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高橋 佑典, 桜庭 雅明, 樫山 和男
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_349-I_356
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本論文は,津波解析の高精度解法の構築を目的とし,非構造格子に基づくCIVA-安定化有限要素法による解析手法の提案を行うものである.この手法は,支配方程式を移流ステップと非移流ステップとに分離し,前者にはCIVA法,後者にはSUPG法に基づく安定化有限要素法を用いて計算を行う方法である.支配方程式としては,波の非線形性と分散性の両者を考慮することが可能なBoussinesq方程式を用いている.いくつかの数値解析例を通して,本手法の妥当性,有効性について検討を行った.
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藤倉 裕介
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_357-I_364
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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本研究では,コンクリートの乾燥収縮率を精度良く推定する手法を構築する目的で,粗骨材の乾燥収縮率を推定するモデルについて検討した.本稿では,粗骨材の空隙径分布に着目し,円筒型を仮定した空隙内部の任意温湿度下における含水状態とその際の応力状態を空隙径ごとに考え,更に粗骨材中の粘土鉱物に含まれる層間水を考慮して乾燥収縮率を推定するモデルを提案した.また,本モデルによる推定結果と粗骨材に直接ひずみゲージを貼り付ける方法で測定した乾燥収縮率の結果との比較を行い本提案モデルの適用性を検証した.その結果,粗骨材の空隙径分布や粘土鉱物の含有量の情報から乾燥収縮率を推定可能であることを明らかとした.
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荒川 淳平, 岩熊 哲夫
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_365-I_374
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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亜弾性表現にはCauchy応力のJaumann速度が標準的に用いられるが,ここでは一般的な材料の亜弾性モデルとして,スピンのみならず変形速度も含めた客観的な応力速度を用いることを検討する.各応力速度の持つ特性は,解析的に結果が比較できる弾性問題と変形の局所化解析を通して比較検討した.その結果,1軸応力状態における局所化発生が荷重変位曲線のピークよりもかなりあとになる結論は少ししか改善されなかったが,実験で観察されるような引張圧縮で異なるせん断帯方向を予測できた.また平面ひずみ状態では,Cauchy応力のJaumann速度を用いた局所化予測よりも実験結果に近い局所化発生応力が,Truesdell応力速度を用いることによって得られることを明らかにした.
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小山 茂, 岩熊 哲夫, 浦野 仁美
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_375-I_383
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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繊維強化プラスチック(FRP)材料は従来の土木材料と比べ優れた点が多いが,母材である樹脂や介在物である繊維材料の有する様々な性質に影響されるため,力学的特性を正しく把握することは容易ではない.FRP材料の設計・開発の際には,材料係数等が既に決まった巨視的な異方性弾性体としてモデル化されることが多く,内部の微視構造が直接考慮されることはない.本研究では,2相材料の問題に仮想母材を導入し3相とした材料に森・田中平均化手法を適用した方法により,実験のFRP供試体について,ビニルエステル樹脂と繊維材料の材料係数の同定を行った.更に,同定値から得られる巨視的材料係数を汎用有限要素ソフトに組み込みFRP積層梁の曲げ挙動を数値的に追跡した結果に基づき,剥離破壊の簡単なモデルを提案した.
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近藤 貴紀, 亀田 好洋, 水野 英二
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_385-I_396
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
本研究では,「横拘束筋間隔」,「柱塑性ヒンジ部の軸方向鉄筋とコンクリート間の付着の有無」および「載荷経路」を水準とした鉄筋コンクリート(RC)柱の二方向繰り返し載荷実験を実施し,特にRC柱破壊領域の軸方向鉄筋とコンクリート間の付着の有無が軸方向鉄筋の座屈・破断性状および内部コンクリートの破壊進展に与える影響について検証した.これまでの二方向載荷下でのRC柱,鋼繊維補強コンクリート(SFRC)柱ならびに中間補強筋付きRC柱の耐荷特性も含めて検討した結果,1)アンボンド型SFRC柱とすることにより,SFRC柱と比べ,軸方向鉄筋の破断個所が少なくなる,2)アンボンド型SFRC柱は横拘束筋間隔に関係なくSFRC柱を含む他のRC柱よりも高い強度保有率を大変位領域まで維持できる,など多くの知見を得た.
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鏡原 聖史, 澁谷 啓, 坂東 聡, 沖村 孝
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_397-I_408
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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近年,台風に伴う豪雨による土砂災害が多発している.これらの土砂災害は,降雨特性ならびに地質構造に応じて発生形態が異なることが指摘されており,崩壊した斜面に関する調査・解析から斜面崩壊メカニズムについて考察された事例研究が数多く報告されている.しかしながら,崩壊斜面を対象として,過去の豪雨で崩壊が発生せず,何故その後の特定の降雨で崩壊したかとの観点に基づく比較検討については,これまでに実施された事例は少ない.そこで本論文では,2009年台風18号の豪雨によって表層崩壊が発生した自然斜面を対象として,地質構造,崩壊土層の詳細調査,分析に基づき,非崩壊時の豪雨と崩壊時の豪雨のイベント時の地盤内の水分状況を二次元飽和・不飽和浸透流解析を用いて推定し,求められた飽和度分布に応じた地盤強度を用いた斜面安定解析から,崩壊メカニズムについて考察している.
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小林 和弥, LIANG Yunfeng, BOURG Ian C., 松岡 俊文
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_409-I_418
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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セメント内の支配的構成要素であるCalcium Silicate Hydrate (C-S-H)マトリクスの力学的特性はセメント全体の力学的な特性を決定づけるため,セメントの優れたマテリアルデザインの実現のために重要である.C-S-Hマトリクスの力学的特性の解明には単位構成要素であるGlobulesの力学的特性の解明が重要であるが,ナノスケールの構造を持つGlobulesの力学的特性の解明は困難である.本研究では,Globulesの力学的特性について,分子動力学法(MD 法) を用いた動的な応力‐ひずみ計算をGlobulesの局所構造と報告されている鉱物であるトバモライト14Åとジェナイトに適用した.結果として,トバモライト14Å,ジェナイトともに弾性域での直線的な応力‐ひずみ関係を得ることができた.その結果,弾性特性の温度依存性や,破壊挙動について議論が拡大できた.本計算から得られた結果は弾性特性,破壊特性ともに鉱物内に存在する水層の重要性を指摘するものであった.
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小林 卓哉, 三原 康子, 西脇 剛史, 藤井 文夫
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_419-I_428
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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局所的な構造不安定の問題,たとえば薄肉構造の局所座屈に代表されるような問題では,部分的な変形が隣接する部分の変形を促し,それらの間でひずみエネルギの授受を伴いながら構造全体の不安定性が増大したり,あるいは解消する挙動が現れる.構造全体の挙動を一つのパラメータによって制御する手法,例えば弧長法によってこの種の問題を安定に解くことは難しく,慣性力あるいは粘性力の効果を導入し,ひずみエネルギの局所的な消散を適正に表現する必要がある.これまで適用例が多い動的陽解法は,その一つの便法である.本研究では最近の汎用FEMを使用し,人工的な粘性を与えることによって局所的な構造不安定に起因する解析の困難を克服した.圧縮を受ける完全円筒に近い弾性円筒シェルを手始めに,材料に起因する不安定現象を含め,全自動かつシームレスの解析によって深い後座屈の領域までをトレースすることが可能になったので報告する.
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堀口 俊行, 香月 智
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_429-I_440
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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本研究は,土石流中の水と礫を分離させることによって,捕捉された巨礫を停止させる底面水抜きスクリーンの実験を行い,個別要素法を用いたシミュレーションで再現解析したものである.実験では,堰堤に堆積した礫の停止位置と形状および流下方向に区分された領域ごとに土石流から分離落下した水量について計測した.次に,礫と水の連成挙動を個別要素法によって解くための擬水滴要素を提案し,実験の再現解析を行った.解析では,礫の堆積過程と区分ごとの水量をシミュレーションし,各要素間の接触力分布や速度ベクトルを時刻歴で分析することにより,土石流の停止機構について検討した.
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桐山 貴俊
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_441-I_451
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
フリー
地盤の大変形問題に対するMPMの適用性を検討する目的で,三軸圧縮試験の再現解析を実施した.再現解析では弾塑性構成則としてMohr-Coulomb則を採用し,試験結果から得られたピーク強度を用いて解析を実施した.解析から得られた応力―ひずみ関係は,大変形領域において試験結果と一致することから,手法の適用性を確認した.
再現解析の初期段階において確認された初期せん断帯と最終的に形成されるせん断帯に特定の関係性が見られることから,三軸供試体のせん断帯形成に影響を与える各種条件について解析的な検討を行い,次の結果を得た.せん断帯は,供試体端部摩擦がある位置近傍に発生する.上下端が拘束された場合,載荷位置に近い方にひずみの局所化が卓越する.角柱供試体においては,せん断帯の発生位置が,供試体の幾何形状に依存している.
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野々山 栄人, 中野 正樹, 野田 利弘
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_453-I_462
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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粒子法は連続体の構成式に基づいて大変形を表現できる解法の1つである.地盤工学の分野では,地盤材料の構成式を粒子法に導入し,地盤の大変形問題を対象とした研究が進められている.一方,従来型の粒子法では,計算精度,特に自由表面での精度が低下する問題が指摘されている.本論文では,従来型および改良型の粒子法(CSPM,SSPH法)を用いて,空間勾配の離散化精度ならびに自由表面を有する単純せん断問題での計算精度の比較検証を行った.Taylor展開の高次項を考慮する改良型手法の1つであるSSPH法を用いることで,その精度を大幅に向上できることが確認できた.
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竿本 英貴, 片桐 淳, 宇津野 衛, 松島 亘志, 山田 恭央
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_463-I_473
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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比抵抗による地下の可視化は物理探査等の分野で広く行われ,得られた比抵抗は変換式を通じて間隙比や飽和度に変換される.変換式にはArchieの式に代表される経験式が用いられるが,それらの適用限界は明らかではない上,式のみでは多孔質体内の水分分布状態をイメージすることは困難である.本研究では,比抵抗から地盤の状態を推定するためのツールとして,高精度多孔質体モデルを用いた数値シミュレーションを提案する.まずは豊浦砂とガラスビーズの各3次元モデルについて定常電流場解析を行い,実験結果と比較した.数値解析結果は実験結果とよい一致を示した.また,多孔質体モデルの飽和度を変化させて比抵抗を求め,数値解析結果と経験式を比較し,飽和度の観点から経験式の適用限界を推察した.
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Takuya SUGIMOTO, Motoyoshi KOBAYASHI, Yasuhisa ADACHI
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_475-I_482
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
ジャーナル
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We examined aggregation rates of colloidal particles in a shear flow as a function of KCl (potassium chloride) concentration at different shear rates. The analysis was based on the trajectory analysis with non-linear Poisson-Boltzmann (PB) solution that calculates the double layer force between highly charged particles. The trajectory analysis here is performed without any adjustable parameters. The PB solution enables us to analyze the experimental data of orthokinetic aggregation of highly charged particles where linearized PB solution is not valid. It should be noted that the comparison of the calculation with the experimental data of aggregation rates in a simple shear flow in the presence of the double layer repulsion had never been attempted until we analyzed. The theoretical calculation with trajectory analysis qualitatively describes the experimental data. However, theoretical values of critical coagulation concentration (CCC) being a bending point of capture efficiencies plotted against the KCl concentration, and capture efficiencies in the presence of double layer force are not quantitatively consistent with experimental ones. These discrepancies might be caused by the additional forces and charge heterogeneity which are not included in the present calculation.
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Weijie ZHANG, Kenichi MAEDA
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_483-I_494
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
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The failure of slope and levee triggered by heavy rainfall is a great threat to people's lives and properties, thus this research aimed at proposing a new numerical simulation tool and investigating the failure mechanism of slope and levee under heavy rainfall. The new Smoothed Particle Hydrodynamics (SPH) model with the coupling of three phases, water, soil and air, has been proposed based on the basic principles. Using the proposed SPH program, the rising and burst of air bubble in water was simulated to validate the application in fluid phase (water and air). After that, a conceptual slope model with different coefficients of permeability has been built and analyzed by the SPH model. The simulated infiltration showed that the proposed SPH model can simulate the interaction force between soil and water well. The model test of slope failure conducted before was simulated by the proposed SPH model with two cases, one without the effect of air phase and another one with the effect of air phase. The infiltration process, slope deformation and air behavior were revealed from the three-phase SPH simulations and the results proved that the proposed SPH model could be a useful tool to evaluate the stability of slope and levee under heavy rainfall.
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内藤 直人, 前田 健一, 山口 悟, 牛渡 裕二, 鈴木 健太郎, 川瀬 良司
2014 年 70 巻 2 号 p.
I_495-I_506
発行日: 2014年
公開日: 2015/02/20
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敷砂緩衝材の落石の衝撃力緩衝メカニズム解明に向けて,落体の質量・速度が衝撃力伝達挙動に及ぼす影響をDEM解析し,粒子接触力,速度から平均主応力と体積ひずみ速度の分布に着目した.落体衝撃力の第1ピークだけでなく第2ピークの発現にも着目し,緩衝材底面からの応力の反射波の影響があることを示した.また,等入力エネルギー条件下では,載荷速度が速いと明瞭な疎密波が伝播するが,落体が重いと伝播途中では高密化が顕著であった.さらに,落体貫入時に,緩衝材内に動員される内部摩擦角は破壊時の内部摩擦角に比べ小さく,等方的な圧縮応力の発生が支配的であり,載荷速度が遅く落体が重い方がその傾向が顕著となることを明らかにした.
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