抄録
物理的な背景を持ちながらも単純なモデルの仮想的な重ね合わせによって,表層地盤における地震動の増幅特性を表現する研究が進められている.これまで,L2関数を対象とした非減衰2層系地盤伝達関数による級数展開の存在について議論されているが,本論文では計算機で級数展開を実現するために必要なその離散表現について考察する.離散関数を階段状関数と対応させることで,離散関数と一対一対応する級数展開の離散表現が存在し,その基底はL2関数における基底と同じく特徴的な直交性を有する.級数展開を利用した応用例として増幅特性の分解法を提案し,数値実験と実観測記録に対してその性能を調べたところ,元の地盤モデルと分解された基底に対応するモデルとの間に物理的な対応が認められた.