抄録
近年,地盤に漏出した汚染物質が地盤内を拡大する例が報告されている.間隙水に溶解する汚染物質の移動は移流分散現象として整理されるが,溶媒の質量に対して溶質の溶解量が無視できない場合,溶液の移動はより複雑になる.本研究では,溶液,溶質の質量保存則から浸透方程式,移流分散方程式を導出し,密度変化を伴う溶液に関して水頭の取扱いを整理し,間隙溶液の密度変化に伴う物質の運動を考慮可能な数理モデルを構築した.構築したアルゴリズムを鉛直一次元移流分散現象に適用し,密度変化による物質の移動性を議論した後,支配方程式を有限差分法に適用し,二次元場における物質移動に関して検討を行った.検討の結果,溶液の密度を考慮することにより領域の運動方向が逐次変化し,結果的に物質の運動が鉛直下方に卓越することが明らかになった.