抄録
流体よりも十分に重い,いわゆる微小慣性粒子が乱流中で偏分布(クラスタリング)することはよく知られている反面,わずかに重い粒子もクラスタを形成するかどうかは明確でない.本研究では粒子の比重を幅広く変化させ,一様等方乱流中の粒子のクラスタ形成に粒子の比重が及ぼす影響を数値実験によって検討した.比重が1.005とわずかに重い粒子では,初期に粒子と流体の速度に差異がある場合のみ,過渡的な粒子の集積が確認されたものの,その集積の程度は非常に弱く,背景乱流場のコルモゴロフ時間の数10倍程度の時間で解消される.比重の高まりとともに粒子クラスタは視覚的にも容易に認識できるようになり,比重が100前後に達するとクラスタ特性はもはや比重に依存せず,すなわち慣性粒子とみなせることが確認された.