抄録
本論文は,鉛直にσ座標,水平に三角形の非構造格子を採用した有限体積法海洋モデルFVCOMと生態系モデルを結合し,有明海における貧酸素水塊の効果的な抑制法について検討した著者らの研究成果を解説したものである.開発した生態系モデルは,溶存酸素濃度を高精度に再現することに成功し,カキ礁を利用した場合,貧酸素化に対して大きな抑制効果を得られることが示されている.また生態系モデルのベースとなる物理環境の再現精度向上に向けて提案された,σ座標に由来する誤差の改善手法,特に極浅海域に適した手法についても説明する.σ座標のまま評価する方法では,非構造格子を用いた高解像度海洋モデルにおいても圧力勾配項に由来する奇異な流れが駆動されるが,極浅海域用に改良したz座標変換後に評価する場合,誤差は大きく修正される.