2018 年 74 巻 2 号 p. I_105-I_114
本研究は,不飽和多孔質体の熱伝導特性を調べることを目的とした数値解析手法の開発を行ったものである.特に,間隙構造や間隙水分布を直接的にモデル化した熱伝導解析を可能とすることで,多孔質体の微視的な構造が,媒体全体としての熱伝導率(マクロ熱伝導率)に与える影響を調べることのできる解析技術を提案する.具体的には,固相粒子をランダムに配置して作成した多孔質構造に,界面自由エネルギーを最小化するように所定量の間隙水を配置する.これら,固相,液相領域の設定は,いずれもマルコフ連鎖モンテカルロ法によって行い,少数の入力データから,効率的にモデル生成ができるようにする.また,得られた数値不飽和多孔質体モデルを用いて熱伝導解析を行うことで,水分量とマクロ熱伝導率の関係を調べた.その結果,固相粒子配置の規則性や,粒子サイズの均一性が,低飽和度領域でのマクロ熱伝導率の変化挙動に現れることを明らかにし,一連の提案手法の有用性を実証した.