抄録
接触音響非線形性を有するき裂による散乱問題を調和バランス-境界要素法によって解くと,安定解,不安定解の区別なく定常解が求まる.本論文では,定常解に無限小の擾乱が生じた場合に,その擾乱の振幅が増大するか減少するかを判別し,定常解の安定性解析を行う.提案手法はHill's methodに基づいて定式化を行い,安定性解析を無限次元非線形固有値問題に帰着させる.数値解析では,調和バランス-境界要素法におけるFourier級数の次数に対応させて行列を有限次元で打ち切り,Sakurai-Sugiura methodによって求解を行う.得られた数値解を従来の非定常解析結果と比較することによって,提案手法の妥当性を示す.