2019 年 75 巻 2 号 p. I_175-I_185
土石流の主たるハード対策として,土石流流下区間に鋼製透過型砂防堰堤が設置されている.近年の気象変化は,局所的な豪雨をもたらし,現行の 100 年再現確率に基づく設計荷重をはるかに超える土石流が高頻度で発生している.この影響で透過型砂防堰堤の損傷事例が報告されている.著者らは,災害事例の分析として実験によって,透過型砂防堰堤の前面に傾斜を与えることで,土石流衝突荷重が低減することを示した.しかし,その低減効果のメカニズムは検証されておらず,設計法への適用には難がある.このため本研究は,個別要素法を用いて事前実験の再現解析を行い,低減効果の発生メカニズムを検討した.そのうえで,前面角を与えると堰堤と先行して衝突した礫が形成する先行停止領域が拡がり,後続礫が堰堤に衝突する運動量を低減させることを示した.