2019 年 75 巻 2 号 p. I_187-I_194
非圧縮性 Navier–Stokes 方程式に対する粒子法の一つである安定化 ISPH 法は,通常の非圧縮性 SPH 法 (ISPH 法) に粒子密度に関する安定化項を圧力 Poisson 方程式に付加した手法である.この安定化項により,粒子の偏在化を防ぐことができ,計算安定,体積保存,精度向上などが数値計算によって確かめられている.この安定化 ISPH 法に対して,我々は先行研究で安定化項が非圧縮性条件と局所密度一定の条件の誤差を重み付きで近似的に最小化するという解釈ができることを理論的に示した.しかしながら,その誤差の重みを表す安定化係数については,いくらかの数値実験によって最適な範囲や傾向が見積もられているものの,それらを理解するための理論は存在しなかった.そこで,本論文では,経験的に知られている安定化係数の範囲や他のパラメータとの関係性を,誤差評価に基づいて安定化係数を最適化する.さらに,その最適化された安定化係数の性質を示すことで経験則で知られていたことを理論的に解釈する.