2020 年 76 巻 2 号 p. I_399-I_410
疲労損傷過程は一般に,亀裂発生とその後の伝播段階に分けて議論され,疲労亀裂進展の駆動力としては応力拡大係数や J 積分が採用される.著者らは近年,材料の局所的な弾塑性応答に基づいた疲労亀裂伝播寿命評価手法を提案している.本手法では,まず繰返し弾塑性 FE 解析と Δε-Nc 基準を用いて疲労亀裂 発生寿命を評価し,新たに唯一導入した疲労亀裂進展速度を規定するパラメータ Δa により疲労亀裂進展 速度 da/dN = Δa/Nc を算出する.これまで 2 次元問題ではその適用性の高さが示されているものの,亀裂伝播速度および下限界応答に対する平均応力影響や表面亀裂問題などに対する検討は行われていなかった.そこで本研究では,応力集中場に存在する表面亀裂に対して亀裂先端における弾塑性応答を基に表面疲労亀裂進展寿命の評価を行った.算出結果と参照する実験結果との比較により,表面亀裂の深さ方向と幅方向における疲労亀裂進展寿命を精度よく評価できることを明らかにした.