2020 年 76 巻 2 号 p. I_389-I_397
同一の溶接継手形式でも板厚の増加や板厚の組み合わせによって疲労強度が低下する現象は,板厚効果として知られている.板厚効果の要因に関しては,疲労き裂発生位置の応力集中や応力勾配などが影響すると考えられており,これまで実験および解析的な検討が進められている.しかし,溶接継手を対象とする場合,それら影響因子を明確に区別することは容易ではなく,板厚効果に関して十分な理解が進んでいるとは言い難いのが現状である.本研究では FE 解析によって疲労試験を模擬したシミュレーションを実施するとともに,実験結果との比較を通じて,板厚効果に関して考察を行った.その結果,実験で観測された板厚効果を解析的検討により再現できることを確認した.また,本研究で対象とした疲労き裂深さ 1mm に到達するまでの寿 命として評価される板厚効果は,主にき裂発生寿命の変化が大きな影響要因となっていることを確認した.