2020 年 76 巻 2 号 p. I_45-I_56
地下水中の溶質輸送解析にあたり,実際の透水係数分布を完全にモデル化できる場合は少なく,一般に解像度の低下したアップスケールモデルが利用される.本研究では成層地盤のアップスケールに着目し,透水係数の空間分布特性の変化を評価するとともに,溶質分散性の変化を数値解析と実験を連携して評価した.透水係数のばらつきを表す不均質度はアップスケールするごとに低下する一方,空間相関性を表す相関長は本研究対象のモデルにおいて大きく変動しなかった.また,流れ方向の分散性を表すマクロ縦分散長はアップスケールによる不均質度の低下に関連して過小推定され,流れと直交方向のマクロ横分散長は変化しなかった.縦分散性はアップスケールによる不均質度や相関長の変化のみならず,層厚増加による溶質の層間移動性の変化にも影響された.