2020 年 76 巻 2 号 p. I_97-I_108
本研究は,ランダム不均質媒体における表面波の伝播挙動を,超音波計測と波形解析によって調べたものである.超音波計測実験には,粗粒結晶質岩である花崗岩をランダム不均質媒体として用い,線集束型の圧電探触子で励起した表面波をレーザードップラー振動計で計測する.計測波形の解析は周波数領域で行い,フェルマーの原理に基づいて各波形観測点での到達時間を求める.この方法で得られた到達時間のアンサンブルから,到達時間が従う確率分布を伝播距離の関数として評価する.次に,確率分布の標準偏差を到達時間の不確実性 (ゆらぎ) の指標として用い,伝播距離に応じたゆらぎの伝播挙動を調べる.以上の波形解析結果から,本研究に用いた花崗岩試料における到達時間のゆらぎは,概ね伝播距離の −1/2 乗と平均到達時間の積に比例することを明らかにする.このことは,ランダム不均質媒体における統計的波動伝播モデリ ングにおいて有用な知見となる .