2021 年 77 巻 2 号 p. I_319-I_328
将来の月面開発における ISRU(In-situ resource utilization)の実現を目指し,本研究では月面模擬砂 FJS-1 を用いた均一加熱および表面加熱実験を行い,温度履歴や模擬砂の粒度分布,堆積状態等の実験条件が,生成される焼成固化材の力学特性に及ぼす影響に関する基礎検討を行った.その結果,(1)完全溶融以前では,加熱時の最高温度が高いほど,最高温度保持時間が長いほど,また粒径が小さいほど,一軸圧縮強度が増加する,(2)融点以上の 1200℃ で加熱すれば,生成される焼成材は高強度コンクリート並の圧縮強度を有する,(3)一軸圧縮強度は加熱後の焼成材密度と一意的な関係がある,(4)焼成材のビッカース硬度と一軸圧縮強度は,おおむね比例関係にある,(5)表面加熱実験においては,一方向熱拡散の影響により,深さ方向に物性の異なる焼成材が生成される,(6)融解した部分に周りの砂が巻き込まれる現象が熱拡散速度に大きく影響を及ぼす,等の重要な知見が得られた.