2007 年 63 巻 1 号 p. 1-15
本研究では,寝屋川流域を対象として,水災害危険度に基づいて土地利用規制政策を実施した場合に生じる費用と便益を比較することで,土地利用規制政策の費用対効果や適用性について検討した.その結果,再現期間が2~30年相当の降雨で浸水する地区の利用を規制したとしても社会的な便益が費用を上回ることが明らかとなった.また,寝屋川流域総合治水対策を参考に,土地利用規制政策とハード的対策を比較したところ,両者の費用はほぼ同等であり,どちらかが一方的に有利というわけではないことが明らかとなった.さらに,我が国の将来的な人口減少が土地利用規制政策の適用性に与える影響を検証したところ,人口減少下では土地利用規制に伴う総便益が現況の値より大きくなり,土地利用規制の適用性が拡大する可能性のあることが示唆された.