土木学会論文集B
Online ISSN : 1880-6031
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和文論文
  • 李 洪源, 松永 信博
    2010 年 66 巻 4 号 p. 321-334
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     九州農政局によって得られた1989年から2008年までの20年間のデータを用いて,諫早湾内の底質環境の経年変化を調べた結果,潮受け堤防建設後,諫早湾の底質は全体的に細粒化し,湾奥部と湾央部では硫化物が増加していることが示された. 2008年夏季において諫早湾の22地点から未攪乱底泥コアを採取し,諫早湾内の底質環境の空間分布特性を調べた.その結果,諫早湾全域において有機汚濁が認められ,特に,潮受け堤防南側の背後の底泥環境がかなり悪化していることが示された.2004年夏季に観測された有明海奥部の底泥環境と比較した結果,2008年夏季における諫早湾の底泥環境は当時の有明海奥部より嫌気状態にあり,硫酸還元の進行が確認された.
  • 李 洪源, 松永 信博
    2010 年 66 巻 4 号 p. 335-343
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     2008年夏季において諫早湾の22地点から未攪乱底泥コアを採取し,底泥表面からの酸素消費速度を求め,空間分布図を作製した.諫早湾底泥の酸素消費速度は,3.18×10-3~1.68×10-2(m/h)の範囲にあり,その平均値は9.06×10-3(m/h)であった.北側沿岸の小長井沖において,酸素消費速度は大きくなる傾向にあった.これは,植物プランクトン由来の有機物が多く含まれているためと推測された.また,九州農政局が諫早湾央部に設置した観測地点における2008年6月から10月の水質データを解析し,現地における酸素消費速度を評価した.現地データから見積もられた酸素消費速度は,底層水温の上昇とともに増加する傾向が認められた.
  • 中下 慎也, 日比野 忠史, 駒井 克昭, 福岡 捷二, 阿部 徹
    2010 年 66 巻 4 号 p. 344-358
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     太田川放水路に形成されている干潟の特性を明らかにするために,1996年から2008年にかけて底質,水質の経年変動,生物分布および有機泥の捕捉調査を行った.さらに,生態環境の形成に果たす河川構造物の役割について検討するために,生物分布,底質,地下水質,地下水位調査を行った.調査結果より,二枚貝の棲息には地盤内の間隙の保持等,地下水流動によって起こる二次現象が重要であることを明らかにした.また,護岸前後に形成された水位差によって促進される地下水流動が地盤内の間隙への有機泥の堆積抑制等に寄与していることを明らかにし,地下水環境を考慮した河川構造物の構築により安定した多様な生態環境が形成されることを示した.
  • 田中 規夫, 八木澤 順治, 福岡 捷二
    2010 年 66 巻 4 号 p. 359-370
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     河道内砂礫州の樹林化し易さを評価する簡易指標として,破断・倒伏・転倒評価指標 (BOI)と流失評価指標(WOI)を組み合わせて,未破壊・未流失,破壊・未流失,未破壊・流失,破壊・流失の 4領域(それぞれ,Region A, B, C, D)を定義した.荒川・多摩川にて両指標の有効性を検証後,複数砂礫州の7地点において洪水確率毎に領域分類を行った.その結果,洪水規模の増大により Region AからD(パターン I), Region AからB(パターン II)への変化という典型的なパターンが存在した.パターン IIでは樹木破壊は生じるが流失は生じないため,再生能力の高い樹木が侵入した場合は,安定樹林帯となる可能性が高い.パターンIIに対する河道対策としては,パターンIになるような対策を講じる必要がある.
  • 秋谷 優, 山上 路生, 禰津 家久
    2010 年 66 巻 4 号 p. 371-383
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     ラングミュアー循環流を対象とした室内実験や海洋観測のほとんどが,水表面のストリーク構造からその存在を推測しており,直接的にラングミュアー循環流の横断面構造を捉えたものは一部の研究を除きほとんどない.本研究では,高速度カメラを風洞水槽の水中部に設置してPIVによって循環流の多点同時計測に成功した.実験結果より系統的にアスペクト比および風速を変えることにより,流れの3次元構造の変化や2次渦の発生個数の増減特性を明らかにした.特にアスペクト比が4の場合には風速の増加によって2次渦の個数が減少し,また一定風速の下ではアスペクト比の減少に伴い個数が増加する興味深い結果が得られた.さらに位相解析を行い,波の谷では循環流が鉛直方向に縮められ,波の峰では引き伸ばされる特性が解明された.
  • 山上 路生, 板井 幸太, 禰津 家久
    2010 年 66 巻 4 号 p. 384-394
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     実河川の高水敷には多様な樹木群が形成される.特に低水路と高水敷の境界部では一般に群生密度が大きい.高水時には境界部の樹木群によって大きな抵抗が発生し,主流速分布は低水路と高水敷のそれぞれに変曲点をもち,従来の単一変曲点をもつ混合層的な流れとはその様相は大きく異なる.そこで本研究では境界部に単列樹木を有する複断面開水路流れにおける乱流構造を明らかにするために,超音波流速計(ADV)を用いた流速3成分計測を行い,植生の配置間隔が2次流や乱流統計量の分布に与える影響やと2次流,レイノルズ応力およびせん断抵抗の関係を定量的に評価・考察する.さらにLESによって低水路/高水敷間の濃度交換特性を計算するとともに,効率的な交換を促進する樹木間隔の存在を明らかにした.
  • 松永 信博, 李 洪源
    2010 年 66 巻 4 号 p. 395-406
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     九州農政局が提供している諫早湾の海上風データと水質データを用いて,諫早湾に形成される貧酸素水塊の風応答特性を調べた.諫早湾では夏季に南南西の風と北北東の風が卓越する.諫早湾口部や湾中央部の底層で形成された低酸素水塊は,南寄りの風によって湾奥部へ輸送されながら酸素を消費し,貧酸素水塊となる.吹送時間が長い場合や風速が大きい場合,貧酸素水塊は湾奥部で湧昇する.一方,北寄りの風は溶存酸素(DO)濃度の高い表層水を湾奥部に吹き寄せ,底層の水塊を湾口に向かって輸送する.従って,南寄りの風が連吹する場合,諫早湾奥部のDO濃度は低下し,北寄りの風が連吹する時,DO濃度は回復する.貧酸素水塊の岸沖方向の移動速度は,水表面に作用する風応力の大きさに依存するものの,数100m/hのオーダと見積られた.
  • 大木 協, 羽田野 袈裟義, 馬 駿, 朝位 孝二, 中野 陽一
    2010 年 66 巻 4 号 p. 407-418
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     水域の貧酸素化対策に用いる気体溶解装置の酸素溶解能力は酸素移動速度により評価される.酸素移動速度の測定は,ふつう水槽中で気泡を発生させる処理水混合型の酸素溶解処理で行なわれるが,加圧型の気体溶解装置には適用できない,総括酸素移動容量係数の評価が必要で測定に手間を要する,などの課題があった.本研究では,加圧型と常圧型の両方の気体溶解装置に適用可能で,任意のDO濃度の水に適用でき,しかも総括酸素移動容量係数の評価を必要としない,省力型の酸素移動速度の測定方法を提案している.DO濃度増分は気体溶解処理前の濃度をゼロとした場合に想定される値として換算ΔDOにより評価し,酸素移動速度を水温20°Cに換算して評価している.室内での比較実験により本提案の測定法が妥当であることを示した.
  • 秦野 拓見, 村上 和男, 石射 広嗣, 門脇 麻人, 桑江 朝比呂, 中瀬 浩太
    2010 年 66 巻 4 号 p. 419-433
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,大都市沿岸域に造成された潟湖型の干潟である「東京港野鳥公園・潮入りの池」において,夏期2潮汐間の水質調査を3年間行い,干潟域における窒素・リン・クロロフィルαの収支,動態について検討した.また,飛来した水鳥の個体数と,底生動物の現存量の調査を行い,干潟域の生物相を把握した.調査の結果,当該干潟は夏期に,リンの供給源,窒素・クロロフィルαの消費源として機能しており,堆積物と直上水間の無機態窒素,リンの交換フラックスは干潟全体の収支の主要因であることが明らかになった.干潟域には年間を通してカワウの飛来数が数多く観測された.水鳥が干潟系外へ持ち去るTN量は最大でも,夏期に水中から除去されるTN量の12%程度,TP量は最大でも隣接海域へ流出するTP量の10%程度と,その値は小さかった.
  • 田中 規夫, N. B. THUY, 谷本 勝利
    2010 年 66 巻 4 号 p. 434-443
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     津波による樹林帯破壊が,熱帯地域で防潮林として期待されているアダン樹林帯背後における津波力低減効果に与える感度を,破壊の有無と樹林帯幅に注目して定量的に評価した.算定した破壊限界値は,2m以上の樹木に対し樹高の8割を津波浸水深がこえた場合に破壊されるという既往知見を概ね満足していた.また,樹林帯幅が厚くなると樹林帯全体としての反射の影響で破壊限界値は大きくなった.樹高が 2,4mの場合は,樹林帯の前面部が破壊されると,樹林帯全部の破壊につながりやすい.樹高が 6m,8mの場合は途中で破壊が止まり,高い津波減衰効果を維持可能である.気根上部が破壊されても,気根のみによる津波力低減効果は大きいが,潜在的津波力減衰率の評価値に対し樹高2,4mの場合で2割程度,樹高6,8mで1割程度の影響を与える.
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