2007 年 63 巻 4 号 p. 357-367
本論文では,開水路における乱流と水表面を同時画像計測することによって水面波紋の流体力学的挙動を実験的に解明するとともに,河川ローカルリモートセンシング技術への成果還元を念頭において可視化トレーサーとしての水面波紋の性能を定量的に評価した.水面波紋の走時挙動は,波−流れ共存場において遡上する波動エネルギーの伝播速度を用いて非常によく説明できることがわかった.遡上波のエネルギーフラックスの全体的なバランスを考慮することによって,水面波紋の代表波数を用いた断面平均流速の推定式を導出し,その有効性を検証した.実河川において水面波紋を可視化トレーサーとした場合,急勾配 · 大流量なほど平均流速への追随性が上がるが,高精度計測のためには本論文で提案した推定式のような波動理論に基づく補正が必要とされる.