抄録
既設防波堤を対象として,その安定性能を推定する手法を提案した.信頼性手法に基づく本手法を適用することで,防波堤被災リスクを定量的に評価することができる.被災の評価指標として,期待滑動量に加えて,新たに端趾部における被災を評価する期待超過頻度という概念を提案した.過去の被災事例に対して,本手法を適用した結果,被災の発生を妥当に再現することができた.また,被災および非被災時の合計40ケースの防波堤に対して検討を行ったところ,高波ピークの継続時間を2時間と仮定した場合,期待超過頻度が0.02∼0.04程度の範囲に被災と非被災を区別する境界が存在することが確認された.最後に,本手法を応用した防波堤の補強改修の評価フローを提案し,具体的な事例を通じて,改修に伴う安定性向上の評価や有効な改修策について検討を行った.