一般的な洪水流量観測法である浮子観測に必要な更正係数(=水深平均流速/表層流速)の実態を把握するために,超音波ドップラー流速分布計を用いて5つの大河川の洪水流における流速鉛直分布データを数多く収集し,更正係数に関する現行の標準値や既存の理論式,実験式の適用性を調べた.流速鉛直分布や更正係数の観測値は,安芸式よりも対数分布則とより一致することが定量的に示された.我が国の更正係数の標準値は安芸式に基づいて算定されているため,観測値と標準値の整合性は低く,喫水4mの浮子に関する観測データの平均値は標準値を0.04~0.10も下回る.これには,安芸式中の流速ピークの相対水深αの設定に問題があることが示された.以上の結果に基づいて,更正係数の評価法を整理した.