2010 年 66 巻 2 号 p. 119-129
流域管理的治水対策の費用便益評価を行う枠組みの中で,世帯の所得分布を考慮できるように立地均衡モデルを拡張し,これを用いて寝屋川流域における土地利用規制の費用便益評価を行うとともに,土地利用規制が世帯に与える影響を所得の違いに応じて分析した.その結果,土地利用規制の影響は各所得層で異なることが明らかになった.所得に対する費用の割合は所得が低いほど大きく,低所得層の負担が大きくなることがわかった.また,再現期間で5年(時間45mm程度)相当の弱いレベルの土地利用規制で総便益が最大となり,再現期間で25年以上の強い土地利用規制を実施した場合は,費用が便益を上回る結果となった.以上より,本流域では,比較的高い頻度で浸水する地区の住宅地としての利用は避けた方がよい可能性のあることが明らかとなった.