2010 年 66 巻 3 号 p. 248-257
本研究では,まず透水係数が不均一に分布する場において不飽和鉛直浸透場を形成し,陽イオン交換反応を伴う溶質の移動状況を観察・測定した.実験では,下端面からの浸出水について電気伝導度,陽イオン濃度および陰イオン濃度の時間変化を測定し,巨視的な物質移動の性質について1次元移流分散方程式の理論解を用いて検討するとともに,着色溶液の浸潤状態を観察した.続いて室内実験を再現するため,不飽和浸透流解析と移流分散解析による数値シミュレーションを行った.その結果,水分保持特性の不均一性が溶質の移動状況に強く影響することが確認された.また陽イオン濃度の時間変化について,陽イオン交換反応の影響は土質構成の違いを考慮したうえで,フロインドリッヒ型の吸着等温式を用いることによって概ね再現可能であることを明らかにした.