抄録
築造年代の古いフィルダムやため池は老朽化が進み堤体の地震時の安定性不足や漏水等により早急な改修が必要な例が多い.筆者らは老朽化ため池の堤体改修を目的に,池内に堆積した底泥土を固化処理して所要の強度と遮水性を有するように製造した築堤土を用いて堤体を築造する砕・転圧盛土工法を開発してきた.しかし,本工法をため池よりも規模の大きいフィルダムの堤体改修に適用するには,堤体安定に必要な固化処理底泥土の強度パラメータとして内部摩擦角φ’を無視して粘着力c’だけを考慮している,c’と一軸圧縮強さqu の関係をc’=qu/2 としているなど土質力学的に不合理な面がある.そこで,本論文では,フィルダムの堤体改修に適用できるように堤体計算に必要な固化処理底泥土の強度として(c’,φ’)だけを使用する設計法を提案し,その適用法を実際の事例を通して説明するものである.