抄録
城郭石垣の動的状態での安定性を力学的に評価することを目的に,実物大の石垣の大型振動台実験をした.石垣は,“打込みはぎ”による反りを有する形状とし,背面は栗石と土で充填した.実験方法は,入力波形を3Hzの正弦波,入力方向を水平一方向とし,加速度振幅を段階的に増加させ,各材料(石材,栗石,背面地山)の応答状態を計測した.その結果,688gal付近を境界に,石垣の変形が“転倒モード”から“孕み出しモード”へ移行し,各材料の応答加速度や各材料間の位相差に変化があることが捉えられた.また,このような石垣の変形過程は,栗石の沈下等による背面土圧の増加や岩盤の内部摩擦角に相当する石材間の摩擦角の低下に伴い発生することが明らかになった.