土木学会論文集C
Online ISSN : 1880-604X
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66 巻, 1 号
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招待論文
  • 三田地 利之, 山添 誠隆, 林 宏親, 荻野 俊寛
    2010 年66 巻1 号 p. 1-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     圧縮性のきわめて大きな泥炭性軟弱地盤に対する変形解析の実務を念頭に,既往の各種構成モデルによるFE解析を盛土規模が大きく異なる2つの試験盛土の施工現場に適用し,動態観測結果との比較を通じて各構成モデルおよび解析手法の適用性について検討した.また,構成モデルの適用性を要素試験の面から調べるために,不撹乱および再構成の泥炭試料について実施したK0圧密非排水三軸圧縮・伸張試験結果と解析値との比較検討を行った.その結果,要素試験で伸張側での強度・変形抵抗を小さく評価するモデルの場合,盛土周辺地盤の水平変位を過大に算出する傾向があること,また盛土荷重規模が大きく限界状態に近づくような問題の場合には有限ひずみに基づく変形解析を実施すべきことが示された.
英文報告
和文論文
  • 原 弘行, 林 重徳, 末次 大輔, 水城 正博
    2010 年66 巻1 号 p. 21-30
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,海水環境下における石灰処理土の性状の変化を明らかにすることを目的にして,石灰処理した有明粘土および濃度を変化させた人工海水を使用して,溶出試験と浸漬試験を実施した.その結果,石灰処理土と接触する人工海水の濃度が高いときほど,生石灰の主成分であるCaの溶出量が多くなることを明らかにした.また,人工海水に浸漬した石灰処理土は,浸漬水との接触面から深部に向かい,徐々に軟化することを示した.軟化がみられる範囲では石灰処理土中のCa濃度が著しく低下する.
  • 林 和幸, 只信 紗也佳, 安原 英明, 岡村 未対
    2010 年66 巻1 号 p. 31-42
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     砂の力学特性に及ぼす炭酸カルシウム結晶析出の効果について,排水条件で三軸圧縮試験を行い定量的に評価した.また,砂粒子間に析出した結晶のボンディングが砂の力学特性に及ぼす影響を確認するため,結晶析出砂を解体し,再構成した供試体を用いて三軸圧縮試験を行った.さらに,エネルギー分散型 X線分光器付き走査型電子顕微鏡 (SEM-EDX)を用いて,析出結晶の同定および微視構造の観察を行った.その結果,有効拘束圧が 30~100kPa,結晶析出量が 0~3%の範囲では,砂粒子表面に析出した炭酸カルシウム結晶による摩擦増加,および正のダイレイタンシーの増加により内部摩擦角は増加すること,せん断初期にボンディングは崩壊すること,結晶によるボンディングはヤング率を増加させることが明らかとなった.
  • 山本 浩之, 西形 達明, 八尾 眞太郎, 西田 一彦, 笠 博義
    2010 年66 巻1 号 p. 43-57
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     城郭石垣の動的状態での安定性を力学的に評価することを目的に,実物大の石垣の大型振動台実験をした.石垣は,“打込みはぎ”による反りを有する形状とし,背面は栗石と土で充填した.実験方法は,入力波形を3Hzの正弦波,入力方向を水平一方向とし,加速度振幅を段階的に増加させ,各材料(石材,栗石,背面地山)の応答状態を計測した.その結果,688gal付近を境界に,石垣の変形が“転倒モード”から“孕み出しモード”へ移行し,各材料の応答加速度や各材料間の位相差に変化があることが捉えられた.また,このような石垣の変形過程は,栗石の沈下等による背面土圧の増加や岩盤の内部摩擦角に相当する石材間の摩擦角の低下に伴い発生することが明らかになった.
  • 菅野 雄一, 西垣 誠, 西面 志
    2010 年66 巻1 号 p. 66-77
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
     バイオ燃料の需要が拡大し,バイオエタノール由来のガソリン添加物であるETBE(Ethyl Tertiary-Butyl Ether)の使用が増加している.本研究では,飽和領域内のETBEの挙動について室内試験によって研究した.その結果,1)僅か1mg/L程度のETBEが地下水に溶け込んでも,そのエーテル臭により地下水質の低下を招くことが分かった. 2)3種類の土試料によるバッチ試験より,ETBE濃度が500mg/L以下では,吸着等温線は線形吸着等温式で表わされる. 3)豊浦砂とマサ土のカラム試験より,両土試料とも遅延係数は1.0程度,分散長はマサ土が豊浦砂より大きいことが分かった. 4)ETBEの移流分散解析のパラメータを得るための測定方法は,地盤内を流れる地下水と同様の条件を設定できるカラム試験がバッチ試験よりも有効であると判断された.
  • 布川 修, 杉山 友康, 太田 直之, 畑 明仁, 堀 倫裕, 亀村 勝美, 岡田 勝也
    2010 年66 巻1 号 p. 78-88
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
     鉄道沿線で発生する降雨による土砂災害から列車の安全を確保するために,のり面防護工などの防災投資や,ある雨量値より大きい降雨が観測されたときに列車の運行を規制することが行われている.こうした防災対策を効果的に実施するためには,斜面崩壊の危険性を定量的な指標により評価して防災計画を講じる必要がある.そこで,本研究では,鉄道で実施されている降雨時運転規制の雨量指標(時間雨量と連続雨量)を用いて,斜面の崩壊発生確率分布と降雨の頻度期待値分布を作成する方法を示した.次いで,これらを用いて斜面崩壊の年間あたりの頻度,および運転規制の規制値を検討する判断材料となる降雨時に想定される事象の頻度を,確率的に算出する方法について論じた.
  • 宮川 歩夢, 辻 健, 松岡 俊文, 山本 剛
    2010 年66 巻1 号 p. 89-99
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
     自己組織化マップ(SOM)とk-means法を用いて,堤防縦断方向に取得された複合物理探査データを分類し,堤防内の土質性状を推定する手法を提案する.本研究では,地中レーダ探査,表面波弾性波探査および電気探査によって,それぞれ電磁波反射波形,S波速度,比抵抗値を求め,電磁波反射波形からは反射強度を表すエンベロープと,反射波形の水平方向への連続性を表すセンブランスを計算した.これらの物理量をSOMとk-means法を組み合わせて分類した.分類結果は,開削,ボーリング調査により推定されている堤防内の土質分布を良く再現している.また,解析結果における各分類クラスの有する物理探査データを読み取る事で,各クラスが表す土質性状を推定することが可能であることが示された.
  • 佐藤 毅, 長江 剛志, 西田 博文, 林 健二
    2010 年66 巻1 号 p. 100-114
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
     陸上廃棄物処分場の表面遮水工選定では,初期建設費だけでなく,遮水構造の機能不全確率を加味したライフサイクルコスト (LCC)を考慮すべきである.しかし,LCC算定に必要な機能不全確率は,現状の機能不全事例の公表状況などにより,正確な評価は難しい.そこで,本研究では,表面遮水工の機能不全確率をパラメタとして推計するのではなく,意思決定変数として扱う表面遮水工選定の方法論を提案する.具体的には表面遮水工の機能不全確率とLCCの構造関係を明らかにし,二重遮水構造,漏水検知システムおよび自己修復システムの導入メリットを評価・比較できる図表を作成した.また,表面遮水工の技術開発によるコストメリットの評価への応用も試みた.
  • 田端 憲太郎, 佐藤 正義
    2010 年66 巻1 号 p. 115-125
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     地震時における地盤の液状化に伴う側方流動が構造物の破壊現象に与える影響を検証するため,現状で可能な限り大型の模型に対する実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)での震動台実験を実施した.模型は沿岸部を想定し,ケーソン岸壁とその背後に杭基礎構造物を有する飽和砂地盤を土槽内に作製し,試験体とした.この試験体に1995年兵庫県南部地震での加速度記録に基づく目標波を入力した実験において地盤を液状化させ,ケーソンの傾斜と水平移動を実例と同様に再現し,杭基礎を破壊させることができた.この実験により,加振中のケーソンの移動は背後地盤の土圧よりもそれに作用する慣性力の影響が主であり,杭基礎はケーソンの移動に伴う地盤変形が誘因となり破壊に至ることがわかった.
  • 植田 謙三, 深川 良一
    2010 年66 巻1 号 p. 126-144
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     本論文では,各種構築物の基礎構造の合理的な設計に関連して,地震時における直接基礎底盤の接地圧分布・変位を簡便に計算する手法を提案している.一般に,大きな外力を水平方向に考えて設計する地震時には,動的相互作用の影響による構築物基礎底面の浮き上がり現象が問題となる.従来法は,基礎と地盤との接触面上に力学的な支点を想定し,煩雑な繰り返し計算を必要としていたが,本論文ではその性状を1自由度の力学系に基づくロッキング・スウェイモデルにより表現し,弾・塑性域の発現を考慮した手法を提案している.また,単体の長方形基礎を対象に有限要素法に基づく三次元数値解析を実施し,提案した簡便な解析法の適用性・妥当性を検証している.
  • 石川 明, 寺田 賢二郎, 京谷 孝史, 社本 康広
    2010 年66 巻1 号 p. 145-155
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     深層混合処理工法など地盤の一部を改良した複合地盤の変形挙動について,改良体の形状や改良率などの影響を考慮した解析を実現するために,等方性地盤材料の3次元非線形弾性構成則を提案し,これを改良地盤の単位周期構造における地盤の材料モデルとして用いた,均質化理論に基づく非線形マルチスケール解析手法を開発する.まず,解析手法とアルゴリズムの概要を述べ,ユニットセル内の地盤の非線形弾性構成則を提示する.次いで,具体的な材料の室内三軸圧縮試験の数値シミュレーションを行い,構成則の基本性能を検証する.そして,単純なマクロ変形パターンに対する異方的なマクロ材料挙動の再現性を例示した後,複合地盤のマルチスケール解析を行い,すべての改良体をモデル化した直接解析の結果との比較により手法の妥当性を検証する.
  • 谷崎 史織, 立石 章, 宇野 浩樹
    2010 年66 巻1 号 p. 156-171
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     深層混合処理工法による格子状地盤改良工法は,地盤のせん断変形抑制による液状化対策工法であるが,レベル2地震動に対しては液状化を抑止するのではなく,改良壁の損傷を許して外的安定を確保するという性能設計的な考え方を採りえる.そこで,格子状地盤改良工法に性能照査型設計法を導入するための基礎研究として遠心模型振動実験を実施し,改良壁の設計において重要な要素となる,改良壁による液状化抑止効果と壁に作用する土圧に着目して実験結果を分析した.その結果,格子間隔が狭いほど液状化抑止効果が高まること,壁体に作用する振動土圧に対しては壁の加速度が支配的であること,地盤が液状化に近づくと振動土圧が増大し,その深度分布形状は液状化程度に応じて変化すること,が明らかとなった.
  • 石田 哲朗, 吉野 隆, 辰井 俊美, 中川 幸洋
    2010 年66 巻1 号 p. 172-182
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     地盤内における土圧の三成分について,土圧挙動を把握するための計測システムを開発した.この計測システムの設置箇所は掘削現場近傍の調査用のボーリング孔などの削孔である.このシステムでは,削孔に油圧式の貫入装置を下ろし,所定の深度で地表面に平行な方向に開発した土圧計を貫入させる.受圧面の向きにより地盤内の土圧の鉛直成分や水平成分が計測できる.同一深度には一つの土圧計だけが貫入されるが,上下の移動によってそれぞれの成分の分布が把握できる.この手法は,工事の進行とともに変化する背面土圧の挙動に対して,設計や施工上の対策工を講じることができる.室内試験や理論的・実験的な解析から,この地盤内の土圧計測システムの実用性を確認した.また,実工事へ適用した実例を示すことによりこの計測システムの有効性を示した.
  • 向後 雄二, 高橋 章, 鈴木 朋和
    2010 年66 巻1 号 p. 183-195
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     この論文では,飽和不飽和圧密解析法を用いて実ダムの築堤時および湛水時の挙動を解析した.この解析法では,不飽和土の挙動を再現するために著者らが提案している弾塑性モデルを用いた.解析値は変位,間隙水圧および土圧の実測値と比較された.変位は実測値と良い一致を示し,解析では盛土材の飽和に伴う沈下が計算されたが,その値はこのダムでは小さかった.盛土による過剰間隙水圧の発生と休止期間での消散というパターンは実測値と解析値で同様であったが,消散速度は異なった.コアゾーン底部で測定された土圧は解析値と非常に良く一致した.盛土高さの上昇とともに土圧は増加したが,一定盛土高さでは僅かに減少した.この現象は解析でも同様の傾向を示した.この解析法は築堤時および湛水時のダム挙動を十分に再現できることがわかった.
  • 冨田 敦紀, 田坂 嘉章, 大森 剛志, 岡 二三生, 足立 紀尚
    2010 年66 巻1 号 p. 202-214
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     堆積軟岩中に構築される地下空洞の挙動を予測するには,ひずみ軟化・硬化特性,ダイレイタンシーなど,軟岩特性や間隙水圧を考慮する必要がある.また,大断面空洞掘削問題では,空洞を分割して掘削するため,逐次掘削解放により空洞周辺岩盤の拘束圧,ひずみ速度が掘削過程で変化する.そこで,本研究においては,軟岩特性を再現できるひずみ軟化型弾粘塑性モデルに拘束圧依存性とひずみ速度依存性を考慮する関数を導入した.そして,これらの関数を導入したひずみ軟化型弾粘塑性水‐土連成有限要素解析を用いて堆積軟岩空洞の掘削問題に適用し,計測値と比較することで本解析手法が軟岩地下空洞の掘削時挙動予測に適用可能であることを明らかにした.
  • 兵動 正幸, 金 郁基, 中田 幸男, 吉本 憲正
    2010 年66 巻1 号 p. 215-225
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     砂と自然粘土を様々な割合で混合した混合土に対し,一連の非排水三軸圧縮試験を行った.まず砂が主体となり骨格構造を成す領域と粘土が主体となる領域の境界を調べた結果,細粒分含有率 Fc=20%程度を境に非塑性と塑性の材料に分かれたのでこの付近を境界と考えた.実験により非排水せん断強度は砂が骨格構造を成す領域では,Fcが同一であっても間隙比の違いによって強度は異なるが,粘土主体の領域では,それぞれのFcに対して,強度は一義的に対応することが明らかとなった.さらに,砂が骨格を成す領域において,強度と間隙比の関係は,Fcによって異なるが,細粒分を粗粒分と等価とみなす割合である寄与率bを導入した等価骨格間隙比を用いることにより,非排水せん断強度と等価骨格間隙比との間に一義的対応関係が存在することが明らかとなった.
  • 内海 秀幸
    2010 年66 巻1 号 p. 226-235
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     水銀圧入試験の計測システムに対応した熱力学状態方程式に基づき,水銀圧入試験より得られる結果と水分特性曲線の等価性を示すとともに,この熱力学状態方程式より導出される間隙径分布モデルを利用して間隙構造との物理的相関が明確な水分特性曲線モデルを構築した.この水分特性曲線モデルは二つのパラメータによりその形式が定まり,van GenuchtenならびにFredlund and Xingモデルにより表現される粘性土の水分特性曲線と良好な相関を示す.提案モデルの有効性は,各種の粘性土に対する水銀圧入試験の結果ならびにUNSODAデータベースで開示された188種の水分特性曲線に基づいて確認した.本研究により粘性土に対する水分特性曲線を水銀圧入試験に基づいて推定する一連のスキームが整備された.
和文ノート
  • 笠間 清伸, 善 功企, 陳 光斉, 林 健太郎
    2010 年66 巻1 号 p. 196-201
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     本論文では,液状化対策として背後地盤を固化処理したケーソン岸壁の振動台実験を行い,ケーソン岸壁の動的安定性に与える固化処理と裏込め石設置の併用効果を明らかにした.以下に得られた結論を示す.(1) ケーソン岸壁の背後地盤を固化処理することで,地震時における岸壁および背後地盤の変形を大きく低減でき,その際には固化処理地盤内に裏込め石を設置することはあまり有効でないと考えられる. (2) ケーソン岸壁の背後地盤を固化処理すると,地震時における岸壁と固化処理地盤の水平振動の位相差が小さくなり,岸壁と固化処理地盤が一体化して挙動する.このことにより,背後地盤からケーソン岸壁に作用する地震時土圧は固化処理地盤底部の抵抗力に起因して減少するため,ケーソン岸壁の地震時水平変位は減少すると考えられる.
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