抄録
本研究では,港湾護岸施設の矢板構造物を対象として,予算制約の下で期待ライフサイクル費用の低減に資するような矢板構造物の維持補修政策と,矢板構造物群全体を対象とした維持補修優先順位を求める方法論を提案する.具体的には,地震動に対する矢板構造物の力学的安定性を評価する.さらに,力学的安定性の評価結果に基づいて矢板構造物補修の優先順位を決定し,矢板構造物群全体の劣化・補修過程を記述するハイブリッド型シミュレーションモデルを提案する.その上で,予算制約の下で,地震被害も考慮に入れた期待ライフサイクル費用を可能な限り低減するような望ましい維持補修政策,優先順位決定ルールを求めるための方法論を提案する.さらに,現実の矢板構造物群を対象として,本研究で提案した方法論の有効性を実証的に検証する.