抄録
現在我が国では厳しい道路予算と道路施設の高齢化を背景として,各自治体が道路施設における予防保全型の維持管理計画を策定している.しかし,これらは道路施設の工種別に事業計画を策定するものである.利用者の視点からみれば1施設に着目する点の管理では不十分であり,ネットワーク全体の安全性を確保する管理手法が必要である.
本研究では,舗装,橋梁,危険斜面を対象とし,それらを同等に取り扱うことで,より効率的にネットワークの安全性を確保する総合維持管理手法を提案した.具体的には,道路施設の維持管理にリスク評価の手法を用いることで複数工種における対策必要性を一元的に定量評価し,道路ネットワーク全体のリスクを効率的に減少させる道路施設あるいは区間を抽出する方法を示す.そして,岐阜県内の4路線においてリスク評価に基づく対策箇所選定を試算し,本研究で提案した対策箇所選定手法がネットワーク全体のリスクを効率的に低減できることを確認した.