抄録
円借款供与により実施される公共土木工事の契約条件に関しては,FIDIC契約約款が一般条件書として使用されることが多いが,その国独自の契約条件や慣習に基づき,特記条件書に特異的な条項の追加あるいは一般条件書の各条項の変更により,請負者や,発注者業務の一部を代行する第三者技術者の権利が制限されることがある.本研究では,円借款の過半を占めるアジア地域の中から,フィリピンおよびベトナムの円借款供与による実際の公共土木工事を取り上げ,FIDIC契約約款を使用した契約条件がどのよう運用されているのかを明らかにすることを目的として,「発注者,請負者,第三者技術者の関係」と「権利主張と契約管理」の二つの観点から,文献調査とインタビュー調査を行った.そして,調査対象とした円借款工事では,自国資金による公共土木工事の場合と比較して,請負者の権利が認められている一方,第三者技術者の権利が制限されている事象および公共土木工事に適用される両国の契約条件の運用に関し違いが見られることを明らかにした.