抄録
明治以来続いてきた官主導による中央集権型の地方制度は,社会の成熟や行財政の破綻から,地方分権と規制緩和による地方の自主性を尊重した制度へと転換する過程にある.地域経営の将来像として,地域を統括する道州と直接住民に関わる市町村からなる道州制が議論されており,道州と市町村で行う業務の配分が重要な問題となってくる.住民意思の反映を考えれば市町村主体の地域主権型道州制が望ましく,市町村に求められる機能も拡大することになる. その際,市町村の組織や区域の拡大による住民との乖離を補完することが重要になる.一方,市町村が厳しい財政や社会情勢のなかでこれからも必要とする社会資本の整備を続けるには,無駄な施設の重複を避け,その機能や効果を最大化するという視点に立った整備も重要となる.本研究ではこれらの問題を整理し,将来の市町村が果たすべき役割を支援するツールとして,GIS(地理情報システム)を活用した社会資本整備支援システム(LSI:Layer System for Infrastructure)の概念を構築した.