2014 年 70 巻 4 号 p. I_137-I_144
我が国においてWTO政府調達協定が発効したのは1996年1月であった.発効から20年近くが経過し,本協定への対応策は完備したように見える.だが,契約管理の面で解決しなければならない問題が多く残されている.最も顕著な問題はWTO政府調達協定の第15条の限定入札に絡むものである.国土交通省を始めとして,ほとんどの発注機関が追加工事の額が原契約額の50%以上となった場合,超過額は支払できないといったルールを設定している.我が国の公共工事は国際市場での実態とは相当に異なった執行システムで動いており,その相違が対応策の理論的整理の面で大きな障害となっている.現在,TPP協定の交渉が進められているが,国際協定への対応策の理論整備は喫緊な問題として捉えなければならない.