抄録
老朽化が進む大量の社会基盤施設を予算制約の下,適切に維持していくことが重要な課題となっている.そのため,補修・更新を行う施設の優先順位決定手法の確立が望まれている.そこで,本論文では2つのモデル港湾施設内の複数の係留施設を対象として劣化予測を行い,予定供用期間中の補修費用と便益から純現在価値(NPV)を算出することで各施設の補修優先度評価を行うとともに,各港湾施設間における補修優先度の差異を考察した.さらに,年間予算を複数通り設定したうえでシミュレーションを行い,年間予算が各施設の補修優先度に及ぼす影響を検討した.
その結果,便益の大きい施設の補修優先度を高く設定した場合にNPVが最大となることがわかった.また,各港湾施設内における各施設の補修費用の合計が最適な年間予算に影響を及ぼすという結論を得た.