抄録
自然災害による損害発生には不確実性と大きな金額変動があるため,被災に備えるべき復旧資金は既往最大または想定最大の災害を前提とした工学的分析を基に算出することが通常である.しかしながら,経営が厳しい鉄道事業者では想定最大災害に十分な資金調達は経営的に困難であり,発生頻度が比較的に多い既往災害規模に対して支払不可能とならない程度に資金調達を行いたいというニーズが圧倒的に多い.本研究では,そうした現場ニーズに応えるため鉄道各社の災害特性と財務状況を考慮した収支モデルを考案し,被災実績データから推定された損害金額に対して来年度等の手元資金や保険などの資金調達を数理的に分析するための破産確率モデルを示す.さらに,その統計的根拠を実証的に示す.