抄録
全国の数多くの河川で,ヤナギ類などが過剰に繁茂した樹林化が進行している.樹林化は,流下能力の低下など治水上及び生物多様性への悪影響や良好な景観へ障害を与えるなど環境上も課題となっている.本研究では,河道掘削を実施した木曽川水系揖斐川を対象として,河道掘削後の概ね10年間に着目し,ヤナギ類が掘削箇所へ侵入し,生長した過程を流況・植生等資料解析,現地調査から考察した.個体の樹形,個体群の樹幹の疎密や分布域等からヤナギ類が過剰に繁茂した状態の特徴を把握し,上流区間のヤナギ類の分布状況,種子を運ぶ河川の流況,掘削箇所の状態等がヤナギ類の過剰な繁茂の状態へ至らす関係要因であることを明らかにした.関係要因を踏まえ,プロジェクトサイクルに即して過剰な繁茂を抑制する方策を提案した.