2020 年 76 巻 1 号 p. 1-13
農村における社会基盤マネジメントに関与するステークホルダーは,多様な価値や異なる考えを有するなど立場や利害錯綜を超えて合意に至るのは容易ではない.一方,我が国の農業用水や里山等の地域資源は,地域固有のルールや規範に基づき利用・管理されてきた.本研究は,事例研究を通じて,地域固有の水資源配分ルールが社会的に認知・承認された根拠ならびに紛争解決プロセスについて明らかにするとともに,地域の秩序形成の観点から,農業土木行政の役割について考察することを目的とした.大分県竹田市大野川上流域に位置する2地域において,コモンズ論の概念・枠組みを足がかりに,農業用水に係る (1) 利用・管理基準の正当性論拠,(2) 利害衝突の争点,(3) 紛争解決・合意を導いた要因について分析・考察を試みた.