2021 年 77 巻 2 号 p. I_1-I_15
日本の建設業では少子高齢化や熟練技能者の減少が問題となっている.近い将来に熟練者が大量退職する前に属人化しているノウハウ(暗黙知)を効果的に抽出・蓄積・伝承する仕組み構築が急務である.本研究では建設現場での熟練者の身体的情報の「抽出」に着目し,その中でも監督者が的確な決断を下す際にノウハウを働かせるプロセスの初動である「視線情報」の計測をターゲットとした.プラント施工で最も重要な作業の一つである吊搬作業へ適用し,熟練者と非熟練者の視線情報を比較した結果,各作業工程での注視傾向の違いを可視化することができた.また,熟練者は約90%の視線がノウハウを伴うものであり,非熟練者と比較して1.4倍のノウハウを働かせて作業を遂行していることが分かった.