土木学会論文集F4(建設マネジメント)
Online ISSN : 2185-6605
ISSN-L : 2185-6605
77 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集号(論文)
  • 屋代 裕一, 王 ゴウ, 羽鳥 文雄, 矢吹 信喜
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_1-I_15
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/27
    ジャーナル フリー

     日本の建設業では少子高齢化や熟練技能者の減少が問題となっている.近い将来に熟練者が大量退職する前に属人化しているノウハウ(暗黙知)を効果的に抽出・蓄積・伝承する仕組み構築が急務である.本研究では建設現場での熟練者の身体的情報の「抽出」に着目し,その中でも監督者が的確な決断を下す際にノウハウを働かせるプロセスの初動である「視線情報」の計測をターゲットとした.プラント施工で最も重要な作業の一つである吊搬作業へ適用し,熟練者と非熟練者の視線情報を比較した結果,各作業工程での注視傾向の違いを可視化することができた.また,熟練者は約90%の視線がノウハウを伴うものであり,非熟練者と比較して1.4倍のノウハウを働かせて作業を遂行していることが分かった.

  • 高林 剛大, 堀田 昌英
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_16-I_29
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/27
    ジャーナル フリー

     地方自治体は,一般に政策決定過程で近隣自治体の政策決定の影響を受けることが指摘されてきた.本研究は,水道料金水準の決定を対象とし,近隣自治体(事業体)の料金水準から受けている影響を定量的に明らかにした.空間的自己相関モデルを用いて全国的傾向を分析した結果,水道料金水準の決定における近隣自治体間の相互作用の影響が統計的に有意であること,地理的距離が近い事業体から受ける影響は,同一都道府県・類似規模の事業体から受ける影響よりも強いことを明らかにした.さらに,地域的傾向も分析し,各自治体を当該自治体と近隣自治体の料金水準の関係に基づく分類から,近隣自治体間の相互作用に地域差があることを示した.

  • 二宮 仁志
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_30-I_41
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/27
    ジャーナル フリー

     水道事業は,人口減少社会の到来,節水型社会への移行や産業構造の変化等に伴う水需要の減少により,採算が取れる料金収入を確保できない事業体も少なくない.一方,高度経済成長期に整備した水道施設の老朽化の進行,施設の耐震化による修繕・更新など,今後,経費増大が予想される.そのような中,Public Private Partnership(PPP)が注目され,包括民間委託やPFIなど多様な方式が導入されている.2018年12月6日に改正水道法が成立し,公共施設の運営権を民間企業に一定期間売却するコンセッション方式の導入が水道事業でも可能となった.一方,海外のPPP推進国では,水道料金の高騰や経営の不透明性等を理由に,2000〜2016年に,世界33ヶ国の267都市で水道事業が再公営化されるなど,公共サービスとしての特性を十分踏まえた契約方式の採用・運用が不可欠といえる.本研究は,我が国の比較的小規模な水道事業におけるコンセッション方式の導入可能性について定量的に考察することを目的とする.埼玉県秩父地域水道事業体を参考に,仮想水道事業モデルを構築し,事業リスクを考慮した経営シミュレーションを通じて,水道事業コンセッションに関する課題について分析・抽出を試みた.

  • 大髙 正暉, 鈴木 貴大, 堀田 昌英
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_42-I_56
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/27
    ジャーナル フリー

     本研究では,道路陥没等の地質・地盤リスクに対処するため,地質・地盤データを入力として施工の進捗により変化する地盤リスクを適宜更新し,追加調査等で地盤リスクを減ずるべきか否かという意思決定の最適タイミングを決定するモデルを,ベイズの定理とリアルオプションを用いることで構築した.ケーススタディとして福岡市地下鉄七隈線延伸工事による陥没のデータをモデルに適用し,追加調査に至らなかった意思決定の経緯を考察した.また,仮想の地盤データを用い,調査タイミングによる調査の価値の変化を示し,モデルに用いた各パラメータの影響を評価した.

  • 二宮 仁志, 後藤 平生, 渡邊 法美
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_57-I_69
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/27
    ジャーナル フリー

     建設産業の労働力人口が減少する中,建設従事者・技術者の大量退職,若年層の入職率低迷や離職率の高さなど技術者不足が深刻化している.優秀な人材確保には,労働条件の改善のほか,建設業の魅力・やりがいを感じ高めていく必要がある.これまでも,ICTの活用・推進等により生産性向上を図るとともに,職場環境や処遇の改善など働き方改革が進められてきた.一方,激甚災害の増加やインフラの大量更新など業務量の増大,感染症拡大に伴い労働環境が急変する中,建設技術者のモチベーションは,必ずしも向上していないとの懸念もある.更なる生産性向上には,その維持・向上は極めて重要な課題といえる.本研究は,建設技術者のワークモチベーション構造の分析・評価手法について提案するとともに,事例研究を通じて,モチベーションの向上・マネジメント手法について考察することを目的とする.有機的統合理論を援用した新たな評価グリッド図の構築,RAI指標に用いた自律性・モチベーション評価を試みた.

  • 佐々木 将仁, 須志田 健, 櫻井 英文, 川尻 峻三, 渡部 要一
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_70-I_89
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/27
    ジャーナル フリー

     平成30年北海道胆振東部地震により,札幌市清田区里塚地区では盛土末端部における大量の土砂流出や2mを超える地盤沈下が発生するなど,甚大な被害に見舞われた.発災後には街区内約140の宅地居住者のうち約半数が避難生活を強いられ,地域コミュニティの維持・存続が危ぶまれた.これに対応するため,札幌市では過去の震災から得た教訓を踏まえ徹底的に速さにこだわりながら,地域からの信頼確保に努め復旧・復興を進めた.発災から3か月で対策工の合意形成,半年で工事着手し被災者に見通しを示し,住宅再建を支援する先手の情報発信と,現地事務所における被災者へのきめ細やかなフォローアップを行いながら,2年で復旧工事を完了した.その結果,被災住民の約9割が現地再建を希望,発災2年半後にはその多くが完了し,早期の市街地復旧に繋がった.

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