本研究ではPFI(Private Finance Initiative)事業の事業権契約を不完備契約として位置づけ,プロジェクト費用に介在するリスクがPFI事業の社会的効率性,及び財務的効率性に及ぼす影響を分析する.その際,負債契約の有限責任性と不完備性が,プロジェクト方法の選択における資産代替と,プロジェクトリスクの発生後における非効率な事業清算をもたらす原因になることを指摘する.さらに,事業権契約におけるサービス対価が完全競争的な入札制度で決定されるメカニズムについて考察する.その上で,公共主体が事業解除権を有し,かつ事業契約締結時にSPC(Special Purpose Company)より保証金を徴収することにより,PFI事業の社会的効率性と財務的効率性を同時に達成できることを理論的に明らかにする.